「不妊ルーム」

現代の女性は妊娠しにくいか?

現代の女性は、明治時代や大正時代などの女性に比べると、
妊娠しづらい状況にあるという、ちょっとがっかりするような、
ほっとするようなお話をしたいと思います。

それは現代がストレス社会だからということもありますが、
もっと生物学的な理由があるのです。
少し考えてみましょう。
明治、大正時代においては、女性は若くして結婚し、
子どもが5人、10人ということもまれではありませんでした。

そうした時代にあっては、女性が50歳近くになっても、
子どもを産むことができたのです。
何故でしょうか?

子供をたくさん産んだということは、
妊娠している期間が長かったと言うことです。
妊娠中は生理がありません。
そのため卵巣の中の卵子は休眠状態になります。
ですから卵子の数も減りませんし、そんなにエイジングもしないのです。
年齢より若い卵子がたくさん存在していますので、
高齢になっても妊娠ができたわけです。

未妊ライフをエンジョイする

”隣の芝生は青く見える”という言葉がありますが、
今は子どもがいないあなたにとって、
親子連れの光景などは羨ましく映るかもしれません。

でもちょっと立ち止まって考えてみてください。
今あなたはパートナーと時間を作って映画を見に行ったり、
楽しい食事をしたりといったことが簡単にできるのではないでしょうか。

子供が産まれたら産まれたでそれは大変です。
映画館行くなどということはまずできません。
食事に出かけるお店も、子ども連れでは限られてしまいます。

ですから、今しかできないことを存分に楽しんでおくことは、
とても大切なことように思います。
とにかく現状をポジティブに考えましょう。

そうしたあっけらかんとした気持が、
妊娠を引き寄せてくれるということがしばしばあるのです。
「不妊ルーム」でも、妊娠のことを忘れてしまっていたら妊娠した
などというメールをいただきます。

今世の中には、楽しいこと、ワクワクすることもたくさんあるわけですから、
そうしたことに積極的にアプローチしましょう。
妊娠は忘れた頃にやってくるという側面もあります。

IVF、ARTという目印

最近街中で、〇〇IVFクリニック、◎◎ARTクリニック
といった看板を目にすることがあると思います。

IVFとはそのまま体外受精のことですし、
ARTとは「生殖補助医療」という意味ですが、
体外受精と同義と考えてかまいません。
要するにIVFクリニック、ARTクリニックと言うのは、
体外受精に力を入れているクリニックだということです。

そうしたことをあまり理解していない人が多いかもしれません。
ですからこうしたクリニックのドアをノックすると、
短期間に体外受精を勧められてしまいがちなのです。
最初から体外受精を決心している場合はいいのですが、
軽い気持ちでこうしたクリニックを受診すると、
ちょっと思わぬ行き違いが生じてしまうかもしれません。

しかし、ART、IVFと言う目印を出しているからといって、
技術的に優れているクリニックという保証はどこにもないのです。
またこうした医療機関のホームページには、私の目から見て、
ちょっと不妊治療の常識からかけ離れた妊娠率が
表示されていることがあります。

不妊の原因のない若いカップルの妊娠率は、
排卵周期あたり20~30%ですから、
体外受精1回あたりの妊娠率が、
40~50%などはあり得ないのです。

体外受精の実態は、ホームページから伺い知ることができない、
これまで長年「不妊ルーム」を運営してきた私の実感です。

プレミアム妊娠を考える

最近になって、”プレミアムな妊娠”ということを考えます。
プレミアムと言うと高級感をともなうイメージがありますが、
そういうことを意図しているわけではありません。

要するに「不妊ルーム」で妊娠されたときに、
その女性が妊娠を継続できるような状態で、
産科の先生に送り出したいということなのです。

妊娠できたのはいいですけれども、その時に乳がんが発見された場合、
本当に大変なことになります。
ですから「不妊ルーム」では、3年前より、
”乳がんのないことを確認してから妊活しよう”をモットーに、
妊娠に取り組んでいます。

また私は年1回の乳がんチェックでは不十分だと考えております。
年に2回の超音波検査の乳がんチェックを勧めております。
また女性が若ければ若いほど、マンモグラフィーによる
乳がんチェックは避けるようにアドバイスしています。
これは何よりも放射線被曝を心配するからです。

女性に貧血はつきものですし、貧血のある体で妊娠した場合、
その継続が困難になってくるかもしれません。
ですから鉄欠乏性貧血にも注意を払っています。

また、数年前より「不妊ルーム」では、甲状腺チェックをしております。
それは、甲状腺ホルモンをより厳格にコントロールすることにより、
妊娠率が上昇するのみならず、甲状腺ホルモン製剤の服用継続によって、
流産率が低下することも知られるようになったからです。

人間は哺乳類の中でも流産しやすい動物でもあるのです。
ですから健全な体で妊娠が継続できるようにと願っているのです。

妊娠力チェックということ

最近、”妊娠力チェック”と言うことをよく考えます。
ブライダルチェックと言う言葉を聞いたことがある人は多いと思いますし、
実際受診された人もいると思います。

このブライダルチェックというのは、婦人科のクリニックに行き、
採血などを行い、後日その結果を聞きに行ったり、
その結果が郵送されたりしているようです。

しかしこれではピンポイントで検査をしているだけですので、
時間に沿ったホルモンバランスの揺らぎなどを知ることができません。

私が考える、”妊娠力チェック”とは、
基礎体温表を重視し、初診時、生理中、高温期のホルモンを調べ、
”転ばの先の杖”として、自分の妊娠力を知っておくということです。

みなさんの周り、あなたの同僚、部下で、まだ結婚を考えていない、
結婚はしているが子供はもう少し先と考える人でも、
基礎体温表をつけ、各種のホルモン値、AMH、DHEA、
その他ホルモンなどをチェックして、
自分の体を知っておくことは大切だと、声をかけてください。
こうしたことが、真の少子化対策になると思います。

最近私がこういうことを考えるようになったのは、
”女性内科”という考え方が浸透してきているからです。
私は医療機関として、今後こうした”女性内科”の診療にも
力を入れていきたいと考えています。




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