「不妊ルーム」

Archive for 8月, 2017

メディアの流す最新情報に右往左往しないで、どんと腰を据えて、
妊娠力を高める「普通の」生活を送ることこそが、
妊娠への大切な道なのです。

しかし、メディアのせいばかりかというと、
私はどうも違うなという気もしています。
新しい治療法がどうこういう以前に、
「不妊治療」そのものが流行のようになっている
という感じがしているのです。

世の中はどんどん便利になってきています。
スイッチひとつで生活空間が快適になったり、
インターネットを利用して、24時間ほしいものが手に入ったります。
銀行に行かなくてもお金が動かせるし、
家事の機械化によって主婦にも自分のための時間が増えました。
それは大変いいことですし、
私もそのような文明の利器を享受しているひとりです。

しかし、その利便性の延長線上に?不妊治療までもが同列に並んでいるような気がしてなりません。
「結婚したけど子どもができない。じゃあ、不妊治療でもしてみようか」
そんな気軽な気持ちで、病院の扉をくぐる人は少なくないと思います。
しかし「あの人もやってるから」というような理由で、
あまりに深く考えず不妊治療の道を選んだ結果、
つらい検査を受けて傷ついてしまったり、
自然妊娠が十分可能な人が
人工授精を受けることになってしまったとしたら、残念なことです。

子どもができにくいと思っても、
すぐに排卵誘発剤や人工授精を考えるのではなく、
もっとじっくりと落ち着いて、夫婦でできることをやってみましょう。
もうしだけ、自分たちの妊娠力を信じてみたいと思う気持ちのある方は、
婦人科の扉の前で、いま一度踏みとどまってみませんか?

排卵した卵子が精子と受精できる能力を持つのは、
通常24時間以内と考えられています。
この時期にタイミングよくセックスを持った場合、
女性の膣内には通常1億~3億程度の精子が放出されることになります。
排卵する卵子は1個なのに対して、1回に放出される精子は数億個です。
ここから精子の受精に向けたいわばサバイバル・レースが始まるのです。

まず、精子は子宮の中に移動しなければならないのですが、
これも膣から子宮へ向けて時間をかけて
泳いでいくようなイメージを持つかもしれませんが、そうではないのです。
膣内は外界の微生物などから守るため、弱酸性に保たれています。
精子はタンパク質が成分であり、
酸性の環境下で長時間生存することはできないのです。
子宮はその断面をみればわかるようにスポイトの形をしていますが、
膣から子宮内への精子の移動はスポイト現象による、
いわば瞬間的な出来事なのです。
数億個の精子のうち、子宮の中へ移動できるのは通常1%以下です。

子宮にたどり着いた精子は、今度は卵管を目指し、
さらに卵管膨大部に待ち受ける卵子へと向かって進んでいきます。
通常セックスから卵管膨大部まで、
精子が辿り着くのは数十分から
数時間の程度の出来事だと考えられています。
精子の受精能力は卵子よりは長く、
通常40時間から70時間程度ですが、
中には1週間前後生存する場合もあります。

卵管膨大部で、卵子の近くまで辿り着ける精子は、
数百程度にまで淘汰されているのです。
卵管膨大部にある卵子は、卵子単独で存在するのではなく、
その周りを幾重にも卵丘細胞が卵子を守るような形で取り囲んでいいます。
精子はそうした細胞の中をかき分けるように
受精を求めてさらに突き進んでいくのです。

私が「不妊ルーム」で行っているフォローアップは、
言ってみれば「内診台のない不妊治療」です。
今まで、他の産婦人科で不妊治療をしてきた人たちが、
私のもとを訪れて、たくさん妊娠しているという事実は、
多くのカップルに「妊娠力」があることを物語っていると思います。

しかし、すべての人がそれだけでじゅうぶんだと言っているわけではありません。
もちろん、医療機関の助けを必要とするカップルもいます。

次に挙げるチェックリストは、不妊治療に進むべきかどうか、
ひとつの判断材料になるでしょう。

□ 基礎体温表に高温期がない(一相性)
□ 月に5、6回以上セックスをしていて、1年以上妊娠しない
□ 生理痛がひどくて会社を休むことがたびたびある
□ 生理が2ヶ月間こないことがたびたびある
□ 不正出血がひんぱんに見られる
□ 不妊治療を受けることについて、夫婦で十分に話し合い、合意している

以上の項目に該当するのであれば、
不妊治療も考えてよいと思います。

妊娠とDHEAサプリメント

妊娠を困難にする因子のひとつは、女性の年齢、
正確には卵巣内の卵子年齢です。
この卵子のエイジングに対しては、「不妊ルーム」では、
フォローアップ開始当初から、漢方薬で対処してきました。

女性の生理期間中にFSHを測定し、この値を指標にして、
漢方薬で反応を見てきたわけです。女性は35歳を過ぎると、
FSHの値が上昇し始めます。
この値は、8mIU/ml以下が望ましいとされていますが、
40歳前後から、10以上の女性が多くなります。

ここ数年、「不妊ルーム」におけるフォローアップで、
37歳以上で妊娠される女性の数がとても増えてきました。
それはDHEAサプリメント(以下、DHEAサプリ)を
使用してからのことです。
DHEAは、女性ホルモン、男性ホルモンの前駆体、
すなわち原料と考えられ、DHEAは、
加齢と共に減少することが知られています。

DHEAサプリを服用してもらうと、
良質な卵が排卵されやすいことが知られています。
そこで、DHEAの値の低い女性に、
DHEAサプリを服用してもらえば、良質な卵が排卵され、
妊娠しやすくなると考えたわけです。さらに、

DHEAサプリの使用に積極的になった理由は、

 1)DHEAの値は採血で簡単に測定できる
 2)数値が生理周期の変動を受けにくい

というメリットがあったからです。

また、体外受精などでも、DHEAサプリを服用しての採卵で、
良好卵がとれるとの報告もあります。

「不妊ルーム」でも、47歳の女性が妊娠され、
その後、48歳で出産されました。
この方も、妊娠時の処方は、漢方薬+DHEAサプリでした。
これからも、FSH、DHEAなどを指標とし、
1人でも多くの女性が妊娠されるよう取り組んでいきます。

あなたがた夫婦が、不妊治療におけるセカンドステップである
人工授精を受ける予定がある、あるいは現在すでに受けているのなら、
人工授精とはどういうものかを、正しく理解しておく必要があります。

人工授精とは、男性の精液をパートナーの子宮内に注入することです。
この技術はかなり古くから行なわれており、
また健康保険適用外ですが1回の人工授精にかかる費用は
およそ1.5~3万円程度。
また、この治療を受けること自体は、
体にもそんなに負担になることではありません。

それでは、セックスによって膣内に射精するのと
どこが違うのかといえば、たとえば男性の精子に問題がある場合
(精子の数が少ない、精子の運動率が低いなど)、
質の良い精子を分離する「パーコール法」や、
元気のある精子が精液の上のほうへ泳いでくる性質を利用して
上方にいる精子を回収して使用する
「スイム・アップ法」用いることによって、
少しでも妊娠する確率を高めようとするところにあります。

また、女性の側の因子として、
子宮頚管粘液が十分に分泌されないようなケース、
つまり精子が子宮のなかに入っていくことができにくいような場合では、
人工授精で精子と卵子の距離を縮め、
近道させることで妊娠の可能性を高めるという意味で
行われることもあります。




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