「不妊ルーム」

Archive for 7月, 2017

妊娠しやすい人、しにくい人

 私が「不妊ルーム」でフォローアップした方で、
妊娠する方が増えてくるにつれて感じるようになったことがあります。
女性の年齢が若く、病気の程度が軽く、治療歴が浅ければ、
妊娠に至りやすいであろうことは容易に想像できます。
しかし、最近つくづく感じるのは、妊娠しやすい心の持ち方、
しずらい心の持ち方というものがあるのではないか、ということです。

 それでは、具体的にはどのような人が妊娠しやすいのでしょうか? 
それは、「赤ちゃんができないことを深刻に受け止めていない人」、
別の言い方をすれば、
「不妊(治療)を生活のほんの一部だと上手にとらえている人」です。

 こんな印象深い方がいました。カウンセリングにこられて
イスに座るやいなや「私はそんなに子どもが欲しいとは思わないんですよ。
でも、夫が赤ちゃん、赤ちゃんとうるさいんです。
それで、背中を押されて相談に来たんです」と言いました。

しばらくフォローアップを続けたところ、
幸いにも4か月後に妊娠反応が陽性になりました。
そのことを彼女に告げると、
「そうですか。それじゃあフラメンコのレッスンはしばらくお休みですね……」
 私も少々あっけにとられましたが、
もしかしたら、このくらいあっけらかんとしているほうが、
妊娠しやすいのではないかと思うのです。

 では逆に、妊娠しづらいという人は、どのような方でしょうか?
「気持ちが前のめりになっている人」を上げることができます。
メール相談や、カウンセリングに来られる方で、
「排卵を1回も逃したくない」「今周期こそは…」と、
非常に力が入っている人がいます。
しかし、こういう方は、本人の意志とは反対に、
なかなか妊娠が難しい、という印象を私は持ちます。

不妊治療の検査方法とは?

まず男性側ですが、セックスが成立するカップルにおいて、
男性が行うべき検査は、精液検査のみです。
男性が精液を医療機関に提出し、
その精液量・精子数・pH(ペーハー)・運動率・奇形率などを調べます。
そしてこの検査で異常が認められなければ、
男性側は問題なしということになります。

いっぽう、女性側の大切な検査も2つしかありません。
1つは基礎体温の周期に合わせて行われる、種々のホルモンチェックです。
生理周期に関係なく行っていい検査として、
テストステロン(男性ホルモン)と、プロラクチンがあります。
プロラクチンは乳汁分泌ホルモンとも呼ばれ、
妊娠後期から値が上昇してくるホルモンですが、
妊娠してないのに、このホルモンの値が高いと、
排卵障害の原因になります。
テストステロンが高い場合、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)という、
排卵障害の代表的な病気などを疑います。
またホルモンチェックではありませんが、
クラミジア感染症のチェックをしておくことも大切です。
なぜならクラミジアは、卵管閉塞を引き起こすことがあるからです。

つぎに生理中に行う検査とし、LH(黄体形成ホルモン)と
FSH(卵胞刺激ホルモン)が大切です。

そして基礎体温の高温期の半ばに行われるのが、
プロゲステロン(P:黄体ホルモン)と
エストラジオール(E2:女性ホルモン)の検査です。
この2つのホルモンは、協調して働き、
子宮の内膜を受精卵が着床しやすいように環境を整え、
妊娠を継続させる働きをするホルモンです。
こうした3つのポイントで行われるホルモンチェックで異常がなければ、
とりあえず子宮と卵巣は健康であり、
受精卵を受け入れやすいということになります。

不妊の悩みが多い年齢

いま、女性の出産年齢は30~35歳が最も多いということをご存知ですか? 
次いで25~29歳、35~40歳がほぼ同数で続いているのです。
このデータは第2子や第3子も含めるので当然30代が高いのですが、
第1子の出産年齢(初産年齢)の平均も30歳を超えており、
近い将来、初産年齢においても30~35歳の層が最も多くなると予想されます。

一昔前のように「女性は、20代で子どもを持つ」
という状況ではなくなってきているのです。
35歳以上の初産を、出産によるリスクが高くなる「高齢出産」などと言われますが、
これが全ての出産の20%近くなってきているのが現状です。

女性の出産年齢が高いということは、不妊のカップルの増加も意味しています。
子どもを持ちたいと思うカップルの年齢が高いほど妊娠しにくくなります。
とくに女性の年齢が35歳を超えるとその傾向は顕著になります。
その大きな理由は、卵子がエイジング(老化)するからです。

44歳女性が妊娠した理由

「不妊ルーム」で、44歳の女性が妊娠されました。
彼女が妊娠に至った理由を考えてみたいと思います。

医学的な理由づけとしては、彼女は不妊治療経験がありませんでした。
ですから、hCGやhMGといった、卵子や卵巣の老化を早めてしまう
注射などが一切行われていません。
これは大変重要な点です。

その一方で、彼女は妊娠しやすい性格だったと言えると思います。
本人は年齢はもちろん自覚されていましたが、
いつも前向きで明るく、ポジティブな印象を私は受けました。
こうしたことは医学的ではない、と考える方もおられますが、
私はそうは考えません。

彼女の妊娠が分かった時、うちのクリニックのスタッフから
「とても44歳には見えない」という声が上がりました。
こうした見かけが若く見える、気持ちを若く持つことは、
副交感神経優位に働きますので、妊娠に対してもポジティブな効果がある、
私はそのように考えています。

また数年前に「不妊ルーム」の最高齢となる47歳の女性が妊娠され、
その後48歳で出産されました。
彼女もまた物事に動じない、明るい、しっかりした性格の方でした。
この女性に関しては、『35歳からの妊娠スタイル』(主婦と生活社)
に詳しく書きました。

さらに、このおふたかたに共通していることは、
周囲に対して協力的な性格であると言うことです。
「私の妊娠が皆様の励みになるのであれば、私としても大変うれしいです」
「なんとしても48歳で出産して、皆さんを元気づけたいですね」
といったコメントが印象的でした。

「不妊ルーム」のモットーは、”不妊治療だけが妊娠に至る道ではない”
ということです。

多くのかたは、子どもを望んで「不妊ルーム」に来院されます。
大変印象深いケースですけれども、非常に面白い方もおられるのです。
かなり前になりますけれども、
ある女性が「不妊ルーム」に相談にこられました。
ところがその女性は、椅子にすわると、
「私は子どもはいりません」と言うわけです。

それで私が不思議に思って、「子どもがいらないのになぜ、
「不妊ルーム」にくるのですか?」と聞きました。
彼女が言うには、「私は子どもは欲しくないんだけれども、
旦那が子ども、子どもってうるさいのです」というわけです。
それで、仕方なしに背中を押されて相談にきた。そういう話なんです。
それで、ご本人の検査、ご主人の精液検査を行いましたが、
何ら問題となる所見は出てきませんでした。

想像するに、”子どもは欲しくない”という気持ちが、
妊娠にネガティブに働いているのではなかろうかと思ったわけです。
何も問題がないわけですから、2~3ヶ月で、
その方は妊娠反応陽性が出たわけです。
それで私が「あなたは妊娠していますよ」と言いますと、
返ってきた言葉が、「ああ、そうですか」
そして、その次に出てきた言葉が
「これで、フラメンコの稽古はお休みですね」とそういった次第でした。
いわゆる感慨とか、そういった様なものがまったく感じられなかったんです。

ところが、その女性というのは、当時クリニックから
そんなに遠くない所に住んでいらしたようで、2年くらい経って、
たまたまその女性を駅前で私は見かけたわけです。
そうすると、2年前とは全く別人になっているわけなんですね。
子どもが可愛くて、可愛くてしょうがないと。ちょっとでも歩くと、
すぐに追っかけて、「危ないでしょう、○○ちゃん」と言っている。
全く同じ人だと思えない。
そういった経験も「不妊ルーム」ではしています。




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