「不妊ルーム」

Archive for 6月, 2017

妊娠を追いかけると逃げてゆく

妊娠、赤ちゃんのことにとらわれすぎないことは大切です。
夫婦の会話の中心が、妊娠のことばかりになっていませんか? 
あるいは、ことあるごとに不妊の話をパートナーにもちかけていませんか? 
もういちど、最近の日常をふりかえってみましょう。
もし、そういうことがあれば、一度、赤ちゃんのことや
不妊治療のことを頭から切り離す勇気をもってください。

私がいつも感じていることは、不妊は一刻を争う病気ではないということ、
一刻を争っているカップルほど、かえって妊娠しにくいということです。
毎月タイミング法を試みているという人は、
たとえば2~3か月、不妊のことも排卵日のことも忘れて
夫婦の生活を楽しんでみてはいかがでしょうか。
そのほうが、かえってよい結果を生むことも少なくありません。

それからもう1つ、できるだけ妊娠を気楽に考えるということも大切です。
赤ちゃんができるかどうかはだれにわからないんだから気楽にやろう、
そう思えると、気持ちが前向きになれるし、
自分とパートナーの関係を冷静に見つめなおすきっかけにもなります。
不妊治療よりも、妊娠よりも、
その前にもっと大切なことがあることを忘れないで下さい。

不妊治療をやめるとき

不妊治療をいつやめるかというのは、ほんとうにむずかしい問題です。
これは、不妊治療を10年間続けた45歳の女性からのメールです。
私がメールで不妊治療からリタイアすることをすすめたことに対して、
お礼を書いてきてくれたのです。

   誰かにそう言ってほしかったのだと思います。
   ここまで治療をがんばってきた私たち夫婦には、
   とても自分たちで踏ん切りをつけることができなかったでしょう。
   ふり返れば、私たち夫婦には桜の花が美しいと感ずる
   心の余裕もありませんでした。

赤ちゃんがほしい、この切実な願いをかなえたいと
不妊治療に足を踏み入れ、身体的精神的苦痛を味わい、
経済的負担を強いられているカップルはたくさんいます。
不妊治療はオール・オア・ナッシングであり、
どんなにがんばっても赤ちゃんに恵まれないカップルはいるのです。

不妊治療を続ければ続けるほど、
赤ちゃんへの思いはつのると思いますが、
いつかは決断をしなくてはならないときもきます。

不妊は、その人の人生観にかかわる問題でもありますが、
どうしても赤ちゃんができなければ、
赤ちゃんのいる生活がすべてではないと
割り切ることも必要になってきます。
不妊治療をこれから始めるという方は、
そのことも夫婦で確認し合うことがたいせつだと思います。

体外受精は金魚すくい!?

「不妊ルーム」では、体外受精を受けようと決めたカップルは、
「自然周期」「低刺激周期」で採卵する医療機関に
紹介することが多くなってきました。
そして、そうした医療機関で実際に体外受精を
経験された方の話を聞いていると、
“体外受精は金魚すくい” なのではないか? 
そんな風に思えてきます。

体外受精が普及してからは、ロング法、
ショート法での採卵が一般的でした。
こうした刺激法では、毎日医療機関に通院して注射をし、
両方の卵巣に数多くの卵を育てて、特定の日に一斉に採卵し、
受精した卵のうち、良好な受精卵(胚)を戻すといったやり方です。
こうした方法は、現在でも主流だと思います。

しかし、体外受精は、医師や培養士の技術が優秀であれば、
ロング法、ショート法は、必要ないと主張する不妊治療医もいます。
自然周期であれば一切薬を使用しないわけですから、
まず通院回数がグッと減ります。

排卵前に、ねらいをつけた卵にスッと近づいていって、
その一個を上手にすくいとってきて、受精させ、
そしてそっと子宮の中に受精卵を戻す。
本当に上手な体外授精-胚移植は、それだけのことなのです。
まさに金魚すくい名人が、ねらった金魚にスッと近づいて、
モナカですくい、お椀の中に金魚を入れることに似ていると思えるのです。
確かに投網を使って、数多くの金魚を捕るという方法もありますが、
これでは網の中の金魚を痛めてしまうでしょう。

現在、不妊治療、とりわけ体外受精にトライしている女性の多くは
仕事を持っていて、「そうたびたびは通院できない」
という声をよく耳にします。
こうした背景があり、自然周期、
低刺激周期採卵が増えているのだと思います。

私は、ホームページに次のように書いたことがありました。
「体外受精」ですか?「海外旅行」ですか? 
もしかしたら「海外受精」するかもしれません。

体外受精にかけるお金で、海外旅行に行ってみたら、
妊娠しました……こんな報告をしてくれたカップルがいたので、
このように書いてみたのです。
このフレーズに対して、
「不愉快だ、こちらは真剣なのに」と言う人もいました、、、。

不妊治療を不真面目にみているのではもちろんありません。
こういった言葉にある意味過敏に反応してしまうとすれば、
リラックスした気分で不妊治療を受けることはむずかしいものです。
妊娠しにくい心の持ち方をしているのではないかと思ってしまいます。

ですから、あなた方も肩の力を抜いて、大きく深呼吸! 
リラックスして、これからのふたりの進む道を話し合ってみてください。

「不妊ルーム」で、47歳の女性が妊娠され、48歳で出産されました。
当院最高齢です。
彼女は当院を受診されるまでに、
人工授精16回、体外受精を6回、経験されていました。
漢方薬とDHEAサプリでの妊娠でした。
私には、ある種の開き直りが、奏功したように思えるのです。

「葉酸サプリがいいよと友人から勧められましたが、
先生はどう思いますか?」
と尋ねられたことがあります。

確かに色々なサプリメントが出回っているわけですが、
当院ではDHEAサプリをすすめることがあります。
この場合でも、私はあくまで西洋医学的な見地から
採血を行い血液の中のDHEAの値が低いことを確認してから、
DHEAサプリの摂取を勧めるようにしています。

葉酸も同様で、採血で血液の中の葉酸値を測ることができます。
低葉酸血症と診断された場合、サプリメントを摂取しなくても、
薬としてフォリアミンという薬があるのです。
もちろん診断がつけば健康保険が適用されますから、
本人負担も少なくてすみます。
そして、医学的に判断できないサプリメントはお勧めしません。

サプリメントと言うのもただ漫然と摂取するのではなく、
あくまでも科学的根拠に基づいて摂取したいものです。




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