私が「不妊ルーム」で女性をフォローアップするにあたって、
真っ先に着目したのは基礎体温表、
次に注目したのが排卵日検査薬という2つのツールでした。

そして私は今、この基礎体温表というものに強い危機感を持っています。
なぜなら、患者さんのお話を聞いても、
「基礎体温表に見向きもしてくれない」
「基礎体温表なんかいらない」
という不妊治療をおこなう医師が増えてきているからです。
中には医師が自ら患者さんに基礎体温表を渡しておきながら、
実際にそれを丁寧に記入してきても、
その基礎体温表に見向きもしないというのです。
一体これはどういうことなのでしょうか? 

実は基礎体温表と日本人女性は、切っても切れない関係にあるのです。
基礎体温表そのものは、アメリカで開発されたものです。
そして基礎体温表は、妊娠ではなく、
避妊をするためのツールとして使用されてきたのです。
要するに基礎体温表を見て、
排卵日前後と思われる期間のセックスを避ければ、
避妊ができると考えられたわけです。
ところが、アメリカで経口避妊薬ピルが普及してくると、
基礎体温表は瞬く間に廃れてしまいました。

そして太平洋戦争の後に、日本に進駐軍がやってきましたが、
彼らが持ち込んだものの中に、
チョコレート、チューイングガムなどとともに、基礎体温表があったのです。
そして日本人女性が基礎体温をつけ、
産婦人科の医師がそれを医療の現場に取り入れるという、
いわば「和魂洋才」の診療が、今日まで連綿と続いてきているのです。


「不妊ルーム」

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