「不妊ルーム」

Archive for 11月, 2016

不妊治療を始めたカップルで、受診した医療機関の
治療方針に納得できなかったり、
不妊治療をステップアップしていくことに
ストレスを感じるようになったときは、
ぜひセカンドオピニオンを求めていただきたいと思います。

直接医師のもとを訪ねるほかにも、
最近では公的な不妊相談を行っている機関もありますし、
インターネットで相談に応じてくれる医師もいると思います。
このようなことで、不妊治療というレールのポイントの切り替えが、
スムーズにいくこともあります。
そして、不妊治療にはステップダウンも選択肢のひとつだということを、
ぜひ頭の中にいれておいていただきたいと思います。

不妊治療を受けて「妊娠」という結果がなかなかでないため、
自己判断で治療を中止して、不妊治療のドクターを転々とする
「ドクターハンティング」に向かう人は少なくありません。
その心理は十分理解できます。

このようにして、医療機関を転々とすることは、
セカンドオピニオンを求めて別の医師の意見を
聞くこととまったく違います。
自分の判断で治療を中断してしまうため、
つぎの医療機関でも一からまた同じ検査を受けることになり、
効率も悪くなります。

「不妊ルーム」の大きな柱は、下記の2つです。
 1)漢方薬などを用いたスローライフ的フォローアップ 
 2)適切なセカンドオピニオンの提供

妊娠に対する男女間の温度差

赤ちゃんを望んでいるのに、なかなか妊娠できないという状態は、
夫婦どちらにとってもストレスを感じるものです。
ましてや不妊治療を受けるとなると、
ふたりの上には相当強いストレスがのしかかってきます。

「不妊は夫婦二人の問題ですから夫婦二人で取り組みましょう」と、
よく耳にします。正論のように聞こえます。
しかしながら不妊治療はその実際において、
検査や治療のほとんどを女性が受けなければならない、
極めて女性の負担の多い医療なのです。
こうした現状の下、不妊治療の現場は、
「女性が母性を獲得するための戦場」と化しています。

こうした現実に男性側の理解が十分でないと、
不妊治療を継続していく過程で、
男女間の温度差を生むことになっていきます。
そして時間の経過とともに、セックスの回数が減少し、
容易にセックスレスへとつながっていきます。

男性側の立場に立ってみれば、今まではお互いに
「ただのセックス」「楽しいセックス」だったのが、
ある時点から、目的至上主義的なセックスを求められます。
「今日はダメだけど、3日後には絶対してね」というふうになりがちです。
男性側に不妊治療に関する知識がないほど、
奥さんの目つきが今までと違うことにうろたえ、
セックスに対して腰がひけてしまうということになりがちです。
男性側に正しい理解がないからこそ起こるすれ違いと言えるでしょう。

働く女性に不妊は多いか?

1986年「男女雇用機会均等法(以下、均等法)」が施行されました。
この法律は女性の労働に対するモチベーションをより明確なものとし、
労働現場での女性を非常に元気づけました。
また、女性の勤労をより容易なものとしました。
その結果、今日では様々な分野で女性が目覚ましく社会進出しています。
これは単に量的なことだけではなく、
むしろその質的な点において目を見張るべきものがあります。
すなわち、日本人女性は労働市場において、自らの実力を遺憾なく発揮し、
今や日本社会は女性力なしには立ちゆかなくなっているのです。

しかし、均等法という法律がどれほどすぐれたものであったにせよ、
必ず影となる部分が存在します。
均等法の施行後、人事・待遇の平等と引き替えに
深夜労働禁止などの女子保護規定が廃止されたことにより、
女性の労働環境も男性並に厳しいものとなりました。
すなわち、雇用の均等化は、
同時に労働量と責任の均等化ももたらしたのです。
その結果、女性の能力が高ければ高いほど、
労働量も責任も膨大なものとなり、
例えば妊娠が困難になってしまうという、
いわば法律が逆ネジとなっているようにも思えます。

下記のようなメールをよくいただきます。

「会社に尽くしたからといって、何か報われるわけではない。
それならば、自分の人生を大事にして、出産することも考えなきゃ」
と思うようになりました。

周囲の友達と話していても、
「こんな生活で妊娠すれば、それは奇跡だ」なんて会話になります。
皆、朝8時半から会社で働き、夜遅い日は終電で帰宅、
そうでなくとも会社を出るのは
いつも9時以降という生活を送っているのが現状です。

 医療では、EBM(科学的根拠に基づく医療:Evidence-Based Medicine)
による医療を実践しようといわれて久しくなりました。
確かに医療は、医学という科学の実践ですから、
EBMは受け入れやすいと思います。

しかし、これに違和感を唱える医師もいないではありません。
多少、声をひそめて話すという傾向はあるようですが、
少し前に、医療関係の雑誌で、ひとりの老医師のエッセイのフレーズが、
私の頭の中に残っています。

 「ある病気に対して、この薬は95%の有効性が
EBM的に確認されているといわれた場合、
『私の患者にその薬を投与して、残りの5%になってしまったらどうしよう』
と思うのが、医師というものの心情ではないか」

 また、最近手にしたある大学の学内情報誌で、
ある教授(産婦人科だったと記憶していますが)が、
「自分がこれまで数十年間に築き上げてきた医師としての経験から出した答えと、
EBM的に得られる答えが対立した場合、
EBMは自分の答えを超えるのか、疑問を感じることがある」
といった主旨のことを述べていました。

 これが、不妊ともなると、EBMによる「死角」は大きく、
見落とされるものが多々あります。
例えば、排卵前に経膣超音波検査で卵胞チェックをおこなうのは、EBMです。
しかし、これを繰り返すと、カップルの多くは、
ピンポイント・セックスになります。
これでは、不妊をますます悪化させないでしょうか? 
私はこういう状態を、「不妊治療不妊」と言っていますが、
うなずかれる女性も多いと思います。

私の本、『35歳からの妊娠スタイル』(主婦と生活社)のテーマは、
”35歳からは心の妊娠適齢期”と考え、
ポジティブな生き方をしましょうということです。

しかし、この本を書いた大きな目的は、
不妊治療の現場で日増しに影響力が強くなっている、
AMH(抗ミュラー管ホルモン)の問題を取りあげたかったからです。

AMHというホルモンは、卵巣の中にある卵子の数の指標ですから、
女性が歳をとるにつれて、数値が下がってきます。
そして、それを引き合いに出されて、
体外受精に誘導されるケースが後を絶たないのです。
私はこうした傾向に、なんとか歯止めをかけたいと思いました。

また私には、自らが「炭鉱のカナリア」でありたいという気持ちがあります。
世の中のことに疑問を感じた時、それを素早く察知し、
必要とされている人々にアナウンスしたいのです。
私は7,400人以上の不妊相談の経験があります。
ですから、このAMH問題を、
世の中の該当する多くの女性に知らせることが、
今の私のミッションなのです。




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