「不妊ルーム」

Archive for 9月, 2016

不妊治療を離れてみる!

 不妊治療は、確かに妊娠のためのひとつの手段ですが、
不妊治療をはじめると視野狭窄になる場合が多く、
妊娠は不妊治療の延長線上にしかないと思いがちです。
しかし、そんなことはないのです。

 不妊治療で、かえってセックスの回数が
減ってしまうケースはよくみられます。
不妊治療のタイミング指導を受けると、排卵日に合わせて、
その日のみセックスをするという味気のない状態になります。
また、人工授精や体外受精へとステップアップするにつれて、
心身ともに疲れてしまうカップルを多くみてきました。
このような状態ではなかなか妊娠しにくいのもので、
私はこれを「不妊治療不妊」と呼んでいます。

 不妊治療に行き詰まったり、不安が芽生えたときには、
不妊治療をいったん休んで自然にまかせてみるもの不妊治療です。
また、その間に妊娠に至ったケースもしばしば見かけます。
いったん不妊治療を休んだら、ふたりでゆっくり将来のことを考えたり、
旅行などにでかけてみたり、趣味をはじめるなど、
リラックスして過ごすようにしましょう。

 そして余裕があれば、二人でできるタイミング法にも
チャレンジしてみてください。
そのときも、「妊娠するのかしないのかは
誰にもわからないんだから気楽にやろう」
というくらいに考えていてよいのです。

例えば、「不妊ルーム」で妊娠される女性の7割は、不妊治療経験者です。
ですから、「不妊ルーム」の基本精神は、
”不妊治療だけが妊娠に至る道ではない!”ということ名のです。

 レッスン:不妊治療を休んでみるのも不妊治療

あなたがた夫婦が、不妊治療におけるセカンドステップである
人工授精を受ける予定がある、あるいは現在すでに受けているのなら、
人工授精とはどういうものかを、正しく理解しておく必要があります。

人工授精とは、男性の精液をパートナーの子宮内に注入することです。
この技術はかなり古くから行なわれており、
また健康保険適用外ですが1回の人工授精にかかる費用は
およそ1.5~3万円程度。
また、この治療を受けること自体は、
体にもそんなに負担になることではありません。

それでは、セックスによって膣内に射精するのと
どこが違うのかといえば、たとえば男性の精子に問題がある場合
(精子の数が少ない、精子の運動率が低いなど)、
質の良い精子を分離する「パーコール法」や、
元気のある精子が精液の上のほうへ泳いでくる性質を利用して
上方にいる精子を回収して使用する
「スイム・アップ法」用いることによって、
少しでも妊娠する確率を高めようとするところにあります。

また、女性の側の因子として、
子宮頚管粘液が十分に分泌されないようなケース、
つまり精子が子宮のなかに入っていくことができにくいような場合では、
人工授精で精子と卵子の距離を縮め、
近道させることで妊娠の可能性を高めるという意味で
行われることもあります。

また、はっきりとした原因がわからない
機能性不妊(原因不明不妊)の場合にも、
人工授精が行われます。
精子と卵子の出会う距離を縮めるためというのが理由のひとつ、
もうひとつは、体外受精に進む前の移行的な治療という側面もあります。

この人工授精の場合でも、成功するかどうかのキー・ポイントは、
どれほど正確に排卵のタイミングにあわせて
精子を注入できるかにあります。
そのために卵胞の計測や、
排卵誘発剤のクロミッドを利用したりするわけですが、
それでも人工授精における妊娠率は、5~8%。
妊娠率がさほど高くないため、5回~10回程度行なうのが一般的です。

 排卵日前後に、なるべく多くセックスをするというのはおすすめの方法です。
しかし、排卵日がプレッシャーになる状況であれば、
いったんそこから離れて自然な気持ちに任せてみるのも立派な治療です。

 女性も男性も子作りのためだけにするセックスを
「楽しいもの」「愛し合うための行為」とは思えないものです。
目的のはっきりしたセックスばかりで、お互いのことを
「妊娠するために必要な存在」としか見られなくなってしまっては大変です。
 そもそも女性は、排卵が近づくと
セックスをしたいという欲求が高まる女性ホルモンの分泌が上昇します。
人間も動物ですから、種を保存するために
妊娠しやすい時期に性欲が高まるのはごく自然なことです。

Lesson:自然の欲求に任せたセックスは妊娠しやすい

多くのかたは、子どもを望んで「不妊ルーム」に来院されます。
大変印象深いケースですけれども、非常に面白い方もおられるのです。
かなり前になりますけれども、
ある女性が「不妊ルーム」に相談にこられました。
ところがその女性は、椅子にすわると、
「私は子どもはいりません」と言うわけです。

それで私が不思議に思って、「子どもがいらないのになぜ、
「不妊ルーム」にくるのですか?」と聞きました。
彼女が言うには、「私は子どもは欲しくないんだけれども、
旦那が子ども、子どもってうるさいのです」というわけです。
それで、仕方なしに背中を押されて相談にきた。そういう話なんです。
それで、ご本人の検査、ご主人の精液検査を行いましたが、
何ら問題となる所見は出てきませんでした。

想像するに、”子どもは欲しくない”という気持ちが、
妊娠にネガティブに働いているのではなかろうかと思ったわけです。
何も問題がないわけですから、2~3ヶ月で、
その方は妊娠反応陽性が出たわけです。
それで私が「あなたは妊娠していますよ」と言いますと、
返ってきた言葉が、「ああ、そうですか」
そして、その次に出てきた言葉が
「これで、フラメンコの稽古はお休みですね」とそういった次第でした。
いわゆる感慨とか、そういった様なものがまったく感じられなかったんです。

ところが、その女性というのは、当時クリニックから
そんなに遠くない所に住んでいらしたようで、2年くらい経って、
たまたまその女性を駅前で私は見かけたわけです。
そうすると、2年前とは全く別人になっているわけなんですね。
子どもが可愛くて、可愛くてしょうがないと。ちょっとでも歩くと、
すぐに追っかけて、「危ないでしょう、○○ちゃん」と言っている。
全く同じ人だと思えない。
そういった経験も「不妊ルーム」ではしています。

不妊治療をやめるとき

不妊治療をいつやめるかというのは、ほんとうにむずかしい問題です。
これは、不妊治療を10年間続けた45歳の女性からのメールです。
私がメールで不妊治療からリタイアすることをすすめたことに対して、
お礼を書いてきてくれたのです。

   誰かにそう言ってほしかったのだと思います。
   ここまで治療をがんばってきた私たち夫婦には、
   とても自分たちで踏ん切りをつけることができなかったでしょう。
   ふり返れば、私たち夫婦には桜の花が美しいと感ずる
   心の余裕もありませんでした。

赤ちゃんがほしい、この切実な願いをかなえたいと
不妊治療に足を踏み入れ、身体的精神的苦痛を味わい、
経済的負担を強いられているカップルはたくさんいます。
不妊治療はオール・オア・ナッシングであり、
どんなにがんばっても赤ちゃんに恵まれないカップルはいるのです。

不妊治療を続ければ続けるほど、
赤ちゃんへの思いはつのると思いますが、
いつかは決断をしなくてはならないときもきます。

不妊は、その人の人生観にかかわる問題でもありますが、
どうしても赤ちゃんができなければ、
赤ちゃんのいる生活がすべてではないと
割り切ることも必要になってきます。
不妊治療をこれから始めるという方は、
そのことも夫婦で確認し合うことがたいせつだと思います。




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