「不妊ルーム」

Archive for 6月, 2016

インターネット不妊にご用心!

インターネットの前に座る時間と不妊度は、正比例の関係にある……
これはあながち冗談ではありません。
「不妊ルーム」での相談の経験から、
そう感じることも少なくありません。
人間というのは、のめりこみやすい動物だからです。

不妊治療にのめりこんでしまった人というのは、とにかく知識は豊富です。
私が参ってしまうような専門用語を書き連ねたメールが
舞い込むこともあります。
しかし、インターネットで得た知識は、偏りがあったり、
ほかの大切なことを見落としていたりします。

これはWeb上の情報は表層的なものが多い
ということも関係していると思います。
また、ネガティヴな症例に自分を重ね合わせ、
落ち込んでしまう人も多いものです。
そのようにして、ますます自分自身を追い込んでいることに、
気づかないのです。

なぜ、こんな深みにハマってしまうのでしょうか?
「子どもができないのはなぜだろう?というごく素朴な疑問をもって、
「なぜかな?」の答えを求めてインターネットに近づくのは、
きわめて自然な成り行きです。

そこまではよいのですが、実際には答えがなかなかみつかりません。
不妊の理由は、人それぞれなのですから
そんなに簡単に答えがみつからないのです。
答えが見つからなければ、余計に知りたくなるのが人間です。
彼女たちが追い込まれるのは、医師の責任という一面もあると思います。
不十分な説明と、早いテンポで進む不妊治療にとまどい、
不安を感じるのではないでしょうか。

インターネットはキーワード検索をすれば、
何万ものサイトがヒットするような情報の海です。
その情報がどれだけ正確であるか、あなたは判断できますか? 
この世界にあまりにも深入りすると、
抜け出すのも難しくなってしまいます。
一度、パソコンの前を離れて、大きく深呼吸してみましょう。

 婦人科という診療科目の名称の拘束性のためか、
精液検査を全くおこなわないで女性のみの検索、
加療をすすめているというケースも多くみてきました。
現在、男性因子による不妊は年をおうごとに増加しており、
私が目からみてもほぼ不妊の原因は
男女半々ではないかと思えてくるほどです。

 女性因子の検索は、子宮因子、卵巣因子、卵管因子、
脳下垂体からのホルモンチェックなど多岐にわたりますが、
いろいろな検査をおこなっても、3割程度が
原因が特定できない機能性不妊という診断になってしまいます。

 一方、男性因子は精液検査を一度おこない、
異常がなければ男性側は異常なしということになります。
簡便であることを考えれば、
この検査をおこなわないというこは考えられません。
しかし、現実に全くおこなわれていないケースが本当に多いのです。

 私は、基礎体温が二層できれいであり、
精液検査において異常が認められず、
子宮卵管造影検査で通過性が確認されれば、
妊娠はあり得るという立場で考えます。
そして、これ以外の多岐にわたる検査について、
実は婦人科医の間でも意見の統一が
はかられていないというのが現状だと思います。

医療機関を利用するという立場で考えれば、
別に不妊治療に特化しているような医療機関を
選ぶ必要は私はないと思うのです。
むしろ、気楽に自分達の現状を確かめたいと思うのであれば、
総合病院などで男性が泌尿器科を受診して精液検査を受け、
女性が婦人科を受診し子宮卵管造影検査を受ける。
そして、ともに異常がないと確認されれば、
また半年ないし1年程度様子をみてみるというのも、
一つの選択肢だと私は思います。

前向きな人ほど妊娠しやすい

”前向きな人ほど妊娠しやすい”、
これは「不妊ルーム」のフォローアップで、私が痛感していることです。
実際、私のクリニックにたずねてくる方は、
みなさん「子どもができない」という現実を抱えています。
同じような状況にあっても、前向きに考えられる方のほうが、
妊娠する確率は高いといえます。

私が「こうしてみたらどうですか?」と言うアドバイスに対して、
いちいち「それはムリです」という言葉が出てきてしまう人は、
ネガティブ系の人だと思います。
私にできることは、妊娠力を高めるためのアドバイスでしかありません。
それを「できない、ムリだ」と拒絶されてしまえば、
とりつく島がありません。

特に、不妊歴が長ければ長いほど、
まるで自分の妊娠は治療という一本のレール上にしかありえないと
思い込んでいるところがあります。
自然妊娠なんて、ぜったいにムリと思っているのです。
ところが不妊治療というレールは、どこまで続くか分かりません。
必ずしも目的地には着かないということは、
まるで考えられなくなっているのです。

反対に、私が投げかけた言葉がすんなり入っていくようだと、
希望がもてるサインだと思います。
アドバイスを前向きに受け止めてくれるだろうと思えるからです。

このように話すと、それはもともとの性格だからしかたがないと
思われるかもしれません。
しかし、そうとばかりはいえません。
明るい性格の方でも、不妊治療歴が長くなってくると、
だんだんと視野が狭くなってくるものです。
医師の言った一言や、医学書に書かれている文葉に縛られて、
「こうでなければならない」と思いつめてしまい、
頭も心も柔軟性を失っている人がとても多いのです。
そういう方と話しているといつも、
脳の表面がコーティングされているような印象を受けます。
私の言葉が、撥水加工のようにはじかれて、ちっとも入っていきません。

だから私は、不妊治療歴の長い人とお話しする際にはかならず、
「今までのことはとりあえず一旦忘れて、
頭の中をリセットしてみてはどうですか?」と
アドバイスすることにしています。
「あなたの頭には書き込みが多すぎるのです。
今日からまた白い紙に書き込みを始めましょう」と。

不妊治療をやめるとき

不妊治療をいつやめるかというのは、ほんとうにむずかしい問題です。
これは、不妊治療を10年間続けた45歳の女性からのメールです。
私がメールで不妊治療からリタイアすることをすすめたことに対して、
お礼を書いてきてくれたのです。

   誰かにそう言ってほしかったのだと思います。
   ここまで治療をがんばってきた私たち夫婦には、
   とても自分たちで踏ん切りをつけることができなかったでしょう。
   ふり返れば、私たち夫婦には桜の花が美しいと感ずる
   心の余裕もありませんでした。

赤ちゃんがほしい、この切実な願いをかなえたいと
不妊治療に足を踏み入れ、身体的精神的苦痛を味わい、
経済的負担を強いられているカップルはたくさんいます。
不妊治療はオール・オア・ナッシングであり、
どんなにがんばっても赤ちゃんに恵まれないカップルはいるのです。

不妊治療を続ければ続けるほど、
赤ちゃんへの思いはつのると思いますが、
いつかは決断をしなくてはならないときもきます。

不妊は、その人の人生観にかかわる問題でもありますが、
どうしても赤ちゃんができなければ、
赤ちゃんのいる生活がすべてではないと
割り切ることも必要になってきます。
不妊治療をこれから始めるという方は、
そのことも夫婦で確認し合うことがたいせつだと思います。

できちゃった結婚のカップルの話はよく耳にするのに、
自分たちは赤ちゃんができずに悩んでいる。
何か納得いかないと感じている方も多いと思います。
ちょっとその理由づけをここで考えてみましょう。
結婚すると妊娠しづらくなるひとつの理由があります。
それは、結婚するとセックスの回数が
減るカップルが多いということです。
いわゆるマンネリズムが大きな壁となっているのです。

夫婦生活は、どうしても時間の経過とともに新鮮味を失っていくものです。
新婚当初はすべてが新鮮で、うきうき弾むような幸福感があったのに、
日常生活に追われているうちに、
いつのまにかそんな新鮮な気持ちを忘れてしまいがちです。
真新しかったカーテンも、クッションも、ベッドも、
見慣れたというより、見飽きたモノになっているかもしれません。
不便ではないけれど、新鮮味のないマイホーム。
そんな空間のなかで、セックスだけは新鮮な気持ちでなんて、
やはり難しいと思います。

これを打ち破るには、意識して変化をつけていきましょう。
大げさなことをしなければいけないわけではありません。
「不妊ルーム」で妊娠された方に聞いてみると、
それはちょっとした工夫でも案外効果があったようです。
カーテンの色を変えてみる、
ベッドまわりにお気に入りのグッズを並べてみる、
髪型を変えてみる、寝室に鏡を置いてみるなどなど。
旅行に行ったら妊娠したという方がとても多いのも、
環境の変化が普段のふたりに
新鮮な空気を吹き込んでくれたからではないでしょうか。




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