「不妊ルーム」

Archive for 4月, 2016

35歳から母親になる

数年前に「出産」を特集した雑誌で、
25歳、30歳、35歳、40歳で
それぞれ母親になった女性のコメントを見たことがありました。

それぞれの事情があって、それぞれの年齢で、
出産したのだと思いますが、その4人から、
異口同音に出てきたのが、「一番良いタイミングで母親になれた」
という言葉でした。
もっとも人はそのように思い込みたい、
という気持ちもあるのかもしれませんが、、、。
ですから、35歳以上の出産には、
色々なメリットもあると思うのです。

人生の経験値の高い女性の場合、妊娠も、
みずから望んだ時期に至っていることが多いと思うのです。
そうであれば、例えば「できちゃった婚」のように
オロオロすることもあまりないでしょう。
また、これくらいの年代であれば、女性が働いている場合、
ご主人の収入も含め、経済面でも、ゆとりを持った出産、
育児に望めるという利点があると思います。

もっとも母親になればなったで、はじめてのことで、
わからないことだらけですから、オロオロするかもしれません。
しかし、あなたの周りを見回してみれば、
すでに母親になっている友達や、女性が沢山いるわけですから、
こうした、先輩ママ達からアドバイスがもらえるのも
メリットの一つでしょう。
すでに、経験した人のアドバイスというのは、
本に書いてあることや、お医者さんの言うことより、
実感を持って受け止めることができるものです。

たしかに体力面では20代の女性にはかなわないかもしれませんが、
そうしたことは、「智恵」と「人生経験」で
充分乗り切っていけると思います。
そのためには、何より、妊娠前から、
妊娠、出産、そして長い子育てに耐えうる
健康な「身体」をつくっておくことが大切です。

27歳の女性が「不妊ルーム」で妊娠されました。
妊娠されたことは、とても嬉しいのですが、
彼女のこれまでの治療に関して、疑問をもってしまうのです。

彼女には、特に妊娠に関する問題はなく、年齢もとても若い方です。
妊娠に至らなかったのは、男性に乏精子症が認められたからです。
しかし精子の数は、極端に低いものではありませんでした。
人工授精で妊娠してもおかしくなかったのではないか、と思っています。

しかしこの方に限らず、最近の不妊治療の傾向として、
女性の年齢、AMHの値、男性因子等を理由に、短期間に、
あるいはこの方のように、人工授精を飛ばして、
体外受精に誘導されるケースが顕著に増えています。

それで彼女は、体外受精を3回おこなったのですが、
妊娠に至りませんでした。
こうした場合、私はやはりその医療機関の体外受精の医療水準、
とりわけ培養士の技術を疑ってしまいます。

私はよく通院されている方に行っているのですが、
体外受精はどこで行うかが全てを決めてしまいます。
また、ホームページ上の情報は、あてにならないと考えてください。

そして、体外受精の医療費は、医療機関によって、
1回あたり、30万円~120万円と、大きな幅があります。
金額と医療機関の実力には、相関関係はありません。
ですから私は、体外受精を考えている方は、
”体外受精を受ける前に相談に来てほしい!”
と切に願っているのです。

男性因子の場合は、ほとんど治療がなされないケースが多いのですが、
「不妊ルーム」では、漢方薬、局所循環剤の内服によって、
この方のように妊娠に至ることは、よくあります。

「不妊ルーム」という、自然妊娠と不妊治療の間のベースキャンプでも、
妊娠を期待できるカップルは多いのです。
何度も繰り返し言うのですが、不妊治療だけが妊娠に至る道ではありません。

インターネット不妊の方急増中

近年、医療機関のホームページの情報は、
PRの色彩を年を追うごとに濃くしています。
インターネットは世界中の誰でも、
自らが情報を発信できることを特質としていおり、
これに制限を加えるということは好ましくないでしょう。

問題はその情報を読みとる側が、
しっかりとしたリテラシーを持つことが大事なのです。
私のこれまでの「不妊ルーム」での経験から、
不妊のことを勉強している人ほど、
妊娠しずらいという印象を持っています。
そして、そうした人々が持つ情報の傾向として、
自らに都合のよい情報を収集しようという傾向が認められます。

インターネット上の情報には、表層的、並列的という特性があります。
さらに発信する側もそれを受ける取る側も、
自らに都合のいいような利用の仕方をするのです。

不妊に関してインターネットで情報を引き出そうと思えば、
その量においては無尽蔵に引き出すことが可能です。
しかしながら、その質を吟味するのは、
利用する側の能力に委ねられていますので、
送り手側の情報を一方的に鵜呑みにしてしまうと、適切な判断にはつながりません。

インターネットは自らの目的をはっきりと持ち、
ピンポイントで利用すると、
自分が必要としている情報に正確にアクセスできることも多くあります。
しかし、ネットサーフィンのような形で、
ウェブ上を漫然とたどっていくような利用の仕方は、
こと不妊に悩む方にとっては行うべきではないと私は思います。
それは終わりのない旅を続けることであり、
不妊ワールドの中に自分の身を置いてしまうことにもなりかねません。

あなたがた夫婦が、不妊治療におけるセカンドステップである
人工授精を受ける予定がある、あるいは現在すでに受けているのなら、
人工授精とはどういうものかを、正しく理解しておく必要があります。

人工授精とは、男性の精液をパートナーの子宮内に注入することです。
この技術はかなり古くから行なわれており、
また健康保険適用外ですが1回の人工授精にかかる費用は
およそ1.5~3万円程度。
また、この治療を受けること自体は、
体にもそんなに負担になることではありません。

それでは、セックスによって膣内に射精するのと
どこが違うのかといえば、たとえば男性の精子に問題がある場合
(精子の数が少ない、精子の運動率が低いなど)、
質の良い精子を分離する「パーコール法」や、
元気のある精子が精液の上のほうへ泳いでくる性質を利用して
上方にいる精子を回収して使用する
「スイム・アップ法」用いることによって、
少しでも妊娠する確率を高めようとするところにあります。

また、女性の側の因子として、
子宮頚管粘液が十分に分泌されないようなケース、
つまり精子が子宮のなかに入っていくことができにくいような場合では、
人工授精で精子と卵子の距離を縮め、
近道させることで妊娠の可能性を高めるという意味で
行われることもあります。

また、はっきりとした原因がわからない
機能性不妊(原因不明不妊)の場合にも、
人工授精が行われます。
精子と卵子の出会う距離を縮めるためというのが理由のひとつ、
もうひとつは、体外受精に進む前の移行的な治療という側面もあります。

この人工授精の場合でも、成功するかどうかのキー・ポイントは、
どれほど正確に排卵のタイミングにあわせて
精子を注入できるかにあります。
そのために卵胞の計測や、
排卵誘発剤のクロミッドを利用したりするわけですが、
それでも人工授精における妊娠率は、5~8%。
妊娠率がさほど高くないため、5回~10回程度行なうのが一般的です。

妊娠を期待して不妊治療をおこなったにもかかわらず、
その不妊治療をやめたら妊娠する。
皆さんの周りにも、そういった人の心当たりが、
1人や2人おられるのではないでしょうか? 
そういうカップルが私のまわりにも多かったのです。

それで、何故だろうと考えました。私の経験も含めて想像するに、
不妊治療が、不妊にさらにストレスをかけているにちがいない。
それが結果的に、夫婦の状況までも悪くしているのではないか? 
不妊治療をやめたということは、
そういうストレスから解放されるわけです。
そのことによって妊娠に至っているのだろうと思ったのです。

不妊治療をおこなうことによって、
かえって状況が悪くなるような状況が、「不妊治療不妊」。
これは私の造語です。そして、ホームページにアップしたのです。
そうすると、「まさにその通りだ」というメールが、
たくさん私のところに届いたのです。

不妊治療がさらに不妊のストレスになるのであれば、
自分にもできることがあるのではないか、
そういうふうに私は考えました。
それで、クリニックのホームページに
「不妊でお悩みの方へ」という1ページを置いたわけです。
それが、「不妊ルーム」の原点です。

実際リアクションがあって、相談に来られる方がポツポツ現れたのです。
しかし、最初のうちは、私は内科医ですから、
治療的なことは考えてはいなかったのです。それで、相談を受けると、
「あなたは何々先生がいいでしょう」
「あなたはこうした方がいいでしょう」
「あなたはまだ不妊治療の必要性は無く、自然妊娠の可能性はありますよ」と、
そういうアドバイスをしていました。
責任というのゲタは自分の方に置かなかったのですから、
そんなに気の重い仕事ではありませんでした。
すくなくとも最初の頃は、、、。




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