「不妊ルーム」

Archive for 9月, 2015

人間にとって、思い込みは怖いものです。
負けると思って出た試合は、戦う前から負けているようなものです。
よく自己暗示といいますが、スポーツ選手では
イメージトレーニングを大切にしている人がたくさんいます。
私は妊娠においても、同様のことがいえるような気がしています。

「自分には赤ちゃんができないのではないか?」
といったマイナスの自己暗示は、
本来備わっている妊娠力が低下していまうことにもなりかねません。
何事においてもそうですが、気持ちがネガティブだと、
なかなかよい結果というものは生まれないものです。

私のクリニックに訪れる方にも、私のアドバイスに、
いちいち「できません」「無理です」と言う方がいます。
そういうネガティブ思考の方の場合、
妊娠までの道のりが遠いなと思てしまいます
また、そういう人は友人たちとの会話でも
「そんなのムリじゃない? やめたほうがいいよ」
と言っているかもしれません。
ムリかどうかなんて、
やってみなければわからないことが多いのです。

このようなタイプの人は、自分に対しても
ネガティブな自己暗示をかけてしまいます。
他人の発言に「ムリ」というのは、
自分は前に進めそうにないから
「あなたも私と同じところにいて」
という心理が隠されているかもしれません。
へんな自己暗示でせっかくの妊娠力を低下させないように。

できると思ったからといって、
かならずしもできるというものではありません。
しかし、できないと思う必要はないと思います。
「自分には赤ちゃんなんかできっこない」などと、
後ろ向きの言葉を、自分に投げかけることはやめにしましょう。

不妊治療をやめるとき

不妊治療をいつやめるかというのは、ほんとうにむずかしい問題です。
これは、不妊治療を10年間続けた45歳の女性からのメールです。
私がメールで不妊治療からリタイアすることをすすめたことに対して、
お礼を書いてきてくれたのです。

   誰かにそう言ってほしかったのだと思います。
   ここまで治療をがんばってきた私たち夫婦には、
   とても自分たちで踏ん切りをつけることができなかったでしょう。
   ふり返れば、私たち夫婦には桜の花が美しいと感ずる
   心の余裕もありませんでした。

赤ちゃんがほしい、この切実な願いをかなえたいと
不妊治療に足を踏み入れ、身体的精神的苦痛を味わい、
経済的負担を強いられているカップルはたくさんいます。
不妊治療はオール・オア・ナッシングであり、
どんなにがんばっても赤ちゃんに恵まれないカップルはいるのです。

不妊治療を続ければ続けるほど、
赤ちゃんへの思いはつのると思いますが、
いつかは決断をしなくてはならないときもきます。

不妊は、その人の人生観にかかわる問題でもありますが、
どうしても赤ちゃんができなければ、
赤ちゃんのいる生活がすべてではないと
割り切ることも必要になってきます。
不妊治療をこれから始めるという方は、
そのことも夫婦で確認し合うことがたいせつだと思います。

「不妊ルーム」は、今から15年以上前に、
不妊治療に対する違和感からスタートしました。
私は、”不妊治療だけが妊娠に至る道ではない”と
いうことをモットーに、内科的なアプローチで妊娠にとりくんできました。
そして最近になってつくづく思うのは、
「不妊ルーム」は、通院されている人の声に耳を傾けることにより、
成長してきたということです。

今から8年前に、お腹の上からの超音波検査による
卵胞チェックを開始しました。
そのきっかけは、腹部超音波検査で、
「こういう超音波なら、何回やってもいい」と
言われたのがきっかけでした。
その女性は、長期間に渡って不妊治療を受け、
本当に辛い日々を送っていたそうです。
生理がきて憂鬱になり、排卵日近くになって、
婦人科に「卵胞チェック行かなくてはといけないと思うと、
1ヶ月に2度憂鬱になる」とおっしゃっていたのが印象的でした。
また、この腹部超音波検査による卵胞チェックを導入したことによって、
妊娠される方が増加しました。

さらに、数年前からDHEAサプリメントを薦めることも行っています。
これも最初のきっかけは、DHEAサプリメントを持参された女性が、
「これはどうなのでしょうか?」と私に質問されたのがきっかけでした。

私は、DHEAサプリメントによって、
年齢の高い女性から良好な卵が採卵できるのであれば、
「不妊ルーム」においても、女性が良好な卵を排卵し、
妊娠に至りやすいのではないかと考えたのです。
そこで37歳以上でDHEAの血液の中の値が低い女性を対象に、
DHEAの服用を薦めたところ、
37歳以上の女性の妊娠が約2割増えたのです。

「不妊ルーム」は、これからも、通院者の方の声に耳を傾け、
一緒に成長していきたいと思っています。

「転院を考えているのですが、
今の先生になんと言えばいいでしょうか?」

この質問を、私はこれまでメール相談や、
実際に「不妊ルーム」に相談にこられた方々から、
どれほど受けたかわかりません。

そして私が言うことは、いつも同じなのです。
「あなたがラーメン屋さんに行って、
あなたが食べたラーメンが美味しくなかった場合、
そのお店の方に、ここのラーメンは美味しくありませんから、
もう来ないと思います。などと言うことはあり得ないでしょう。
単純にリピートしないだけだと思います」

私は医療機関に対しても、ラーメン屋さんと同じでいいと思うのです。
あなたが通院して、医師やスタッフと相性が合うと思えば、
治療を継続すればよいのです。
そう思わなければ、やめればいいだけのことです。

医療というと、「医師」対「患者」という、
ある種の上下関係のようなものを感じてしまうのでしょうか? 
「この先生にお任せしたのだから、、、」
といった受け身の気持ちになってしまいがちです。
しかし医療は、メディカル・サービスです。
どこでサービスを受けるのかは、
あなた方カップルで決めてなんら問題はないのです。
まして不妊ということは、子どもが欲しいという前提がなければ、
そもそも医療機関に行かないほうが多いのですから、
なおさらのことです。

そして、どのような医療を選択するのかという時に、
重要なことは、適切なセカンドオピニオンだと思います。
「不妊ルーム」では、医療費が高額な
体外受精を受けるカップルに対しては、
「体外受精カウンセリング」を開設し、
セカンドオピニオンの提供に、最近特に力を入れています。
それは何よりも、”美味しいラーメン店”に
行ってもらいたいという気持ちからです。

妊娠という結果がでないからといって、
不妊治療の医療機関を次々と巡り歩くことを、
買い物にたとえて「ドクターショッピング」といいます。
こうしたことを繰り返している人は、本人の希望とは裏腹に、
妊娠から遠ざかってしまう場合が多いようです。

しかし、あなた方カップルが、体外受精、顕微授精などの
高度生殖医療が視野に入っているなら、
「ドクターショッピング」ではなく、”説明会ショッピング ”
を勧めたいと思います。

体外受精は一回あたり40万~60万円の医療費がかかるわけですから、
慎重に見極めるのは当然のことです。
しかし、ホームページは、どの医療機関も、
あたかも自分達のクリニックが優秀だという風な作り方になっていますから、
あまり当てになりません。

体外受精を行う医療機関では、説明会を開いているところが多いようですが、
これには、公開非公開があります。
非公開は自分の医療機関に通院している患者さんのみを
対象とした説明会です。
一方で通院している方々も含め、一般に公開している説明会もあります。
こうした説明会は、
自らの医療に自信を持っていることの現れかもしれません。

体外受精説明会に参加した方の話を聞いていると、
その内容には、雲泥の差があるように思います。
医師がスライドを使って2~3時間かけて解説する
医療機関の説明会がある一方で、最初にビデオを流し、
そのあと看護師さんが治療スケジュールを棒読みし、
最後に医師が質疑応答に応じるだけという説明会(?)もあります。

体外受精は、妊娠率が22~23%なのですから、
自分達が納得した医療機関で受けるようにしたいものです。
「不妊ルーム」では、こうしたニーズに応えるべく、
体外受精カウンセリングを始めたのです。




「不妊ルーム」