「不妊ルーム」

Archive for 6月, 2015

 タイミング法の基本中の基本が
「基礎体温表」をつけるということです。
最近、不妊治療の現場ではだんだんと、
この基礎体温表がないがしろにされているように感じていますが、
残念なことです。

また、つけることが目的となって、
有効に活用していない方もたくさんいます。
基礎体温とは、目がさめたらベッドから起き上がる前に
測る体温のことです。
測るといっても普通の体温計ではなく「婦人体温計」を使います。

 私は、基礎体温表つけることは、妊娠を望む人にとって、
ほかのどんな検査よりも重要だと感じています。
なぜなら、基礎体温表を2~3か月もつけていると、
鏡があなたの姿を映し出すように、
基礎体温表があなたの卵巣の状態を映し出しようになってきます。
もちろん、排卵の日を予測するという意味でも重要です。
基礎体温を測ることは、いわば家庭でできる不妊の検査です。
これから不妊治療を受けるという人にも、
基礎体温表をつけることをぜひともおすすめします。

また、高額の婦人体温計には、
体温を測ると同時に基礎体温表が記録できるものがありますが、
私はそうしたものはおすすめしていません。
数カ月間の経過をひと目で見ることができないからです。

 基礎体温は毎朝7時に測るものだと思っている人も多いようですが、
これも正しくはありません。時間にこだわりすぎと、
なにより長続きしなくなります。
基礎体温は、起床の直前に測る体温だと思ってください。
そして、基礎体温を測ったら、必ず基礎体温表に書き込んでください。

 基礎体温表には、一般に市販されているノートブック型のものや、
最近ではインターネット上からダウンロードできるものもありますが、
私はこのような基礎体温表をおすすめしていません。
その理由をひとことでいってしまえば、
ページが変わることによってつながりがわからなくなるからです。
とくに、薬などを服用している場合は、
効果の判定などもすぐにつかめないこともあります。
そこで私は、数ヶ月間の基礎体温がひと目でわかる
横長のもをおすすめしています。
また、高温期と低温期の境界線である
36・7℃に赤い線がひいてあるものが理想です。

人工授精の憂鬱

「不妊ルーム」では、毎日いろいろな方々の相談を受けています。
そうした中でも、医療費が高額な体外受精に関する相談は、
深刻さがあります。一方、人工授精を受けている女性の相談には、
ある種の憂鬱さがあります。

それは人工授精1回当たりの妊娠率が5%~8%と、
とても低いことに起因していると思うのです。
「不妊ルーム」では、これまでに人工授精を、
20回~30回経験したという方の相談も、ときどき受けます。

人工授精を何回も受けたことがある方ならおわかりになると思いますが、
最初の2,3回は、「妊娠できるのではないか?」と期待します。
しかしこれが5,6回ともなると、気持ちが惰性的になってしまうのです。
そして人工授精が、10回を越えたあたりからは、
「妊娠なんてかすりもしない」「妊娠は別世界のこと」と、
思えてくるとおっしゃいます。

不妊治療医の中には、「人工授精で妊娠する人は3回までに妊娠する」
とか、「人工授精で妊娠する人は、タイミング法でも妊娠できる」
という言い方をする医師もいます。

人工授精を何回も経験した方の相談や、
不妊治療の医師の意見などを聞いているうちに、
私は人工授精をスルーする=”ジャンプアップ ”ということもありだと、
考えるようになったのです。

不妊治療は、人工授精から健康保険適用外の自由診療となります。
自由診療は、医師の裁量権が大きくなりますが、
そうであれば、患者サイドの意志も、
より大きく反映されていいと思うのです。
その意味からも、患者ではなく、 
”消費者 ”という自覚を持つことがとても大切だと思うのです。

メディアの流す最新情報に右往左往しないで、どんと腰を据えて、
妊娠力を高める「普通の」生活を送ることこそが、
妊娠への大切な道なのです。

しかし、メディアのせいばかりかというと、
私はどうも違うなという気もしています。
新しい治療法がどうこういう以前に、
「不妊治療」そのものが流行のようになっている
という感じがしているのです。

世の中はどんどん便利になってきています。
スイッチひとつで生活空間が快適になったり、
インターネットを利用して、24時間ほしいものが手に入ったります。
銀行に行かなくてもお金が動かせるし、
家事の機械化によって主婦にも自分のための時間が増えました。
それは大変いいことですし、
私もそのような文明の利器を享受しているひとりです。

しかし、その利便性の延長線上に、
不妊治療までもが同列に並んでいるような気がしてなりません。
「結婚したけど子どもができない。じゃあ、不妊治療でもしてみようか」
そんな気軽な気持ちで、病院の扉をくぐる人は少なくないと思います。
しかし「あの人もやってるから」というような理由で、
あまりに深く考えず不妊治療の道を選んだ結果、
つらい検査を受けて傷ついてしまったり、
自然妊娠が十分可能な人が
人工授精を受けることになってしまったとしたら、残念なことです。

子どもができにくいと思っても、
すぐに排卵誘発剤や人工授精を考えるのではなく、
もっとじっくりと落ち着いて、夫婦でできることをやってみましょう。
もうしだけ、自分たちの妊娠力を信じてみたいと思う気持ちのある方は、
婦人科の扉の前で、いま一度踏みとどまってみませんか?

2015年5月の妊娠

当クリニックの事情で、5月の診療日は14日間と大変少ないものでした。
それにも関わらず8名もの方が妊娠に至りました。

私は、本の中でもたびたび述べているように、
”妊娠”というのは、カップル2人の間から生まれる力=”妊娠力”
の賜だと思っているのです。

「不妊ルーム」では、そのカップルの”妊娠力”を高めるために
漢方薬を処方したり、お腹の上から卵胞チェックを行うといったアシスト、
いわば側方支援をおこなっています。

「不妊ルーム」の基本精神は、
”不妊治療だけが妊娠に至る道ではない!”ということです。

「不妊ルーム」は、自然妊娠と不妊治療の間の”ベースキヤンプ”です。
このベースキヤンプで、2015年5月までに、
1,791名の方が妊娠されています。

今月もこの精神で、1人でも多くの方が妊娠されるよう、
スタッフ一同頑張っていきます。

妊娠反応陽性時の「不妊ルーム」での治療内容は、下記の通りです。

Aさん 34歳:タイミングのみ(ー)
Bさん 32歳:漢方薬のみ(+)
Cさん 39歳:クロミッド+漢方薬(ー)
Dさん 40歳:漢方薬のみ(+)
Eさん 37歳:タイミングのみ(ー)

Fさん 29歳:タイミングのみ(+)
Gさん 39歳:漢方薬のみ(ー)
Hさん 38歳:クロミッド+漢方薬(ー)

※(+):不妊治療歴あり、(ー):不妊治療歴なし

 セックスの回数が多いほうが妊娠に至りやすいことは、まちがいありません。
しかし、その質についても考えてみたいと思います。
つまり「愛のあるセックス」こそ「妊娠力を高めるセックス」だということです。

 〝愛のある〟という言い方は抽象的すぎるかもしれません。
言い換えれば、お互いの気持ちが高まりあうセックス、
より激しく燃えるセックスということです。
これは精神論ではなく、肉体的な面からも、
女性の快楽と男性の射精のタイミングが、
妊娠のメカニズムに深くかかわっているとされているのです。

 女性が深く感じると、頸管粘液の分泌がより高まります。
また、射精された精子は、卵子を目指して競泳していくような
イメージを持っている人が多いのですが、それは誤解です。
精子が子宮のなかへ移行するのは、精子の自律的な運動だけではなく、
子宮がスポイトの役割をして精子を吸い上げるとい言われます。
つまり、女性が感じることによって子宮がより収縮し、
それにとって精子が子宮へと吸い上げられるのです。

 それはおそらく一瞬の出来事で、
そのとき吸い上げられずに腟の中に取り残された精子は、
弱酸性という過酷な環境下ではサバイバルできません。
ですから、女性が強い快楽をともなうセックスは、
妊娠にとってはより好条件だということになります。

 男女が息を合わせて寄り添いながら行う〝愛のあるセックス〟は、
妊娠力の大切なポイントである「夫婦仲」を
よりよくしてくれるアイテムでもあります。
そういう面からも私は、やはり
「愛のあるセックスが妊娠力を高める」のだと信じています。




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