「不妊ルーム」

Archive for 3月, 2015

不妊治療をやめるとき

不妊治療をいつやめるかというのは、ほんとうにむずかしい問題です。
これは、不妊治療を10年間続けた45歳の女性からのメールです。
私がメールで不妊治療からリタイアすることをすすめたことに対して、
お礼を書いてきてくれたのです。

   誰かにそう言ってほしかったのだと思います。
   ここまで治療をがんばってきた私たち夫婦には、
   とても自分たちで踏ん切りをつけることができなかったでしょう。
   ふり返れば、私たち夫婦には桜の花が美しいと感ずる
   心の余裕もありませんでした。

赤ちゃんがほしい、この切実な願いをかなえたいと
不妊治療に足を踏み入れ、身体的精神的苦痛を味わい、
経済的負担を強いられているカップルはたくさんいます。
不妊治療はオール・オア・ナッシングであり、
どんなにがんばっても赤ちゃんに恵まれないカップルはいるのです。

不妊治療を続ければ続けるほど、
赤ちゃんへの思いはつのると思いますが、
いつかは決断をしなくてはならないときもきます。

不妊は、その人の人生観にかかわる問題でもありますが、
どうしても赤ちゃんができなければ、
赤ちゃんのいる生活がすべてではないと
割り切ることも必要になってきます。
不妊治療をこれから始めるという方は、
そのことも夫婦で確認し合うことがたいせつだと思います。

「ストレスを少なくしましょう」という言い方をされますが、
これは実際に行うことは難しいと思います。
なぜなら、私たちは、多かれ少なかれストレスにさらされながら
生きているとも言えるからです。
しかし、不要なストレスを避けること、
そして、そして何よりも大切なのは、ストレスは避けて通れないものと考え、
それを身体の中に溜めこまないことです。
「デトックス」(毒出し)という言葉が流行りましたが、
身体の中からストレスをできるだけ早いうちに
追い出してしまうということは、とても大切です。

私がおすすめする〝ストレスデトックス〟の方法は、
副副交感神経が優位になるような生活です。
人間のからだは、意識とは別に交感神経と
副交感神経からなる自律神経というものに支配されています。
緊張すると血圧が上がったり、心臓がドキドキするのは、
交感神経が優位になるためですし、
お風呂に入りリラックスすると心拍数が落ちるのは、
副交感神経が優位になるからです。

ストレスが強いと、常に緊張状態に置かれるため、
交感神経が優位に働いています。多くのストレスにさらされている人は、
交感神経が優位な生活になり、自律神経のバランスが乱れているといわれます。

ですから、ストレスをデトックスすることは、
意識的に副交感神経優位な生活を送るということでもあるのです。
1日の終わりにはゆっくり入浴する、
パートナーとくつろいだ時間を持つ、
気に入ったアロマオイルを試したり、お花をかざったり……。

こうしたくつろいだ時間を持つことは、
副交感神経を高めることにつながります。
実をいうと、この自律神経の司令塔もまた、大脳の視床下部です。
したがって、副交感神経優位な生活は、
質のよい卵子が排卵されやすい生活であり、
そして妊娠に近づきやすい生活と言えるのです。

黄体機能不全の新しい考え方

不妊治療において原因が特定されない間、
あるいはその不妊の原因が黄体機能不全や排卵障害と考えられる場合、
通常、排卵の時期に合わせてセックスを指導する
タイミング指導が行われます。

排卵障害に対しては、従来よりクロミッド
(一般名:クエン酸クロミフェン)という薬が頻用され、
現在に至るまで、この薬は
不妊治療の首座にある薬といっても過言ではありません。
実際、この薬により「福音」をもたらされた夫婦は数しれないと思います。
近年、この薬の価値はさらに高まっているように思えます。

それは、排卵障害と黄体機能不全は、コインの裏表のように、
表裏一体の関係にあると考えられるようになったからです。
卵胞が成熟し、排卵を終えた卵胞は黄体というものに変化をします。
その黄体から分泌されるホルモンが黄体ホルモンであり、
このホルモンは体温を上昇させ、妊娠を継続させるという働きがあります。
このホルモンの分泌や作用が十分でない状態を黄体機能不全といい、
臨床的には高温期の基礎体温の低値や、
黄体ホルモン値の低下として現れます。

最近の黄体機能不全の考え方としては、
最初に排卵障害ありきと考えられるようになってきています。
ですから排卵が認められても、黄体機能不全がみられる場合には、
積極的にクロミッドが使用されるようになっています。
「不妊ルーム」でもそうした考えで、
クロミッドを使うことが多くなってきました。

 多くの生き物は単体では次の世代を残すことはできません。
二つの遺伝子が出会い、融合し、新たな生命として誕生します。
人の場合は精子は男性の体内に、卵子は女性の体内にあり、
それが出会って初めて受精の可能性が出てきます。
ですから、赤ちゃんの誕生にはセックスは欠かせないものです。
けれども、「精子と卵子の出会い」を医療がになう人工授精や、
IVF、顕微授精となると
「ノンセックスで妊娠にチャレンジ」ということになります。

 タイミング法では二人の間のセックスはとても重要でした。
精子と卵子の出会いを女性の体内で期待するため、
排卵される時期にタイミングよく触れ合う必要があったからです。
ところが、IVFでは必要なくなる。
セックスが「授かる」という意味を持たなくなってしまう。
これはある意味大変なことかもしれません。
義務的なセックスから解放されてホッとするという人もいましたが、、、。
二人の間の触れ合いという意味でのセックスまで消滅してしまっては、
たいへんです。

 IVFだからこそ、忘れて欲しくないのが、
夫婦の絆、触れ合うという行為です。
セックスには子どもを授かるという目的だけではなく、
お互いの愛を確かめるという意味合いもあるはずです。
しかし、不妊治療をしていると、
ついお互いに義務になってしまいがちです。
とてもデリケートな夫婦の触れ合いという部分に、
医師という他人が介入してくるだけに、
考え方、見かたを変えることが必要かもしれません。
「子作りには関係ないかもしれないけれど、でも…」という気持ちを、
お互いが持ち続けることが本当に大切です。

35歳は妊娠のまがり角!?

遠い昔の化粧品のCMに、「25歳はお肌の曲がり角」
というのがありました。これを妊娠にあてはめるなら、
「35歳は妊娠の曲がり角」と言えるかもしれません。

「不妊ルーム」を開設してしばらくの間、
35歳の 「壁 」 で苦戦をしていた時期がありました。
それから、私も経験を積んでいき、漢方薬を積極的に利用したこと、
ブログでも取りあげているDHEAというサプリメントの使用などにより、
35歳以上の妊娠も順調に伸びてゆきました。

現在の「不妊ルーム」では、女性の35歳は、
「 壁 」という状況ではまったくありません。
しかし、それでもこの年齢を「曲がり角」と考えるのは、
例えば35歳で第一子を授かった人が、
二人目を希望して来院される人が急増しているからです。
いわゆる ” アラフォー世代 ” になって、
二人目不妊で苦労するケースを少なからず経験しています。

35歳を越えると、FSHの上昇や、DHEAの低下といった、
鏡には映らない体の変化が、数値としてあらわれるようになってきます。
こうした検査は、医療機関を受診して、
自らチェックをお願いすることも可能です。
また、自らができることとして、基礎体温表を大切にして、
それを見ているだけでも、自分の体のリズムというものは、
ある程度自分で知ることができます。
ブライダルチェックがあるのなら、
「妊活チェック」もあっていいかもしれません。

私は子供を持つということを「家族計画」ではなく、
「人生計画」と考えるべきだと、皆さんに伝えています。
自分やご主人の年齢、あるいは自分たちをとりまく環境、
社会状況をなどを考え、
これからのライフプランを立てていただきたいと思います。

私の最新刊『35歳からの妊娠スタイル』(主婦と生活社)には、
35歳からどのように妊娠にアプローチすればよいか、
わかりやすく解説しました。きっと皆さまのお役に立つと思います。




「不妊ルーム」