「不妊ルーム」

Archive for 12月, 2014

私は最近、泌尿器科医で、
男性不妊を専門とする先生からお話を伺う機会があり、
「精子力」について、深く考えさせられました。
妊娠は、一個の精子が、卵子の中に飛び込んで
受精卵となることからスタートします。
そして、受精が成立したその後、妊娠するかしないかは、
卵子側の問題だと考えられてきました。
たとえば、女性の年齢が高いと、
卵子のエイジングによって分割が進まない、
あるいは妊娠したあと流産してしまうのも、
女性側に原因があると考えられてきたのです。

しかし、よく考えてみてください。
1個の精子の中には23本の染色体、
そして1個の卵子の中にも23本の染色体があります。
精子と卵子が受精することによって、
46本、すなわち23対の染色体となり、
そのほかの細胞と同じ染色体数になるわけです。

船にたとえるならば、受精卵という船には、
23人の男性の船員と、23人の女性の船員が
乗船しているとイメージできるでしょう。
その船がうまく航行していないとしたら、
それはすべて23人の女性船員の責任でしょうか? 
男性船員も23人いるわけです。

こうした例え話をしたのは、男性因子の改善、
すなわち、より元気のある精子を増加させるという
泌尿器科的なアプローチがたいせつだと強調したいからです。
男性因子の改善によって、結果的に流産などが減り、
妊娠率も上げることができると、その医師は言うわけです。

これまで、卵子側の事情と考えられてきた流産ですが、
実は、男性にも原因があるということも段々わかってきているのです。
ですから、これからは、今まで以上に
男性の出番というのが増えてくると思いますし、
私自身そうなって欲しいと切に願います。

自分は自然妊娠でいくべきか、あるいは人工授精や
体外受精を視野に入れるべきか……
こうした妊娠へのアプローチ法に関しては、女性の年齢が高くなるほど、
私は「Yの字思考」という考え方がたいせつになってくるように思います。
「Yの字思考」とは、妊娠へのアプローチにAとBの2つのルートがあった場合、
AとBのどちらのルートを進むかを早めに決定しようという考え方です。

不妊治療で医療機関を訪れた場合、
一般的にはステップアップ法という形で進んでいきます。
まず半年から1年間タイミング法を行い、それでも妊娠しなければ、
人工授精へとステップアップし、人工授精を通常5〜6回行います。
それでも妊娠しなければ、体外受精などの高度生殖医療へと
ステップアップするのが一般的なルートです。

しかし、女性の年齢が高い場合において、
たとえば人工授精に多くの時間を費やしてしまうようなことがあると、
体外受精にエントリーしても妊娠しにくくなってしまいます。
女性の年齢が高くなればなるほど、
体外受精の妊娠率が低下するという事実があるからです。

そこで「Yの字思考」という考え方がたいせつになってくるのです。
Yの字のように、ものごとの進路をAorBの両ウィングで考える――
たとえば、あなたが不妊治療を積極的に視野にいれるのであれば、
体外授精などの高度生殖医療への期間をあまり長くおかないことを指します。
通常のステップアップ療法に対して、私はジャンプアップということを、
勧めることも多くなってきました。
すなわちタイミング法が上手く行かなかったカップルに、
人工授精をスルーして、体外授精にエントリーする、
あるいは、不妊治療というものを体外授精からスタートする、
こういったやり方を、私はジャンプアップと言っています。

Hさんが3回目の妊娠に至るまで

Hさん(38歳)が、「不妊ルーム」でこの度、
3度目の妊娠をされました。第1子を、
”こまクリベイビー”として授かった人が、
第2子も妊娠するということは珍しくありません。
しかし、3人目というのは、彼女が初めてだと思います。
3回妊娠に至ったことより、
彼女が「不妊ルーム」に訪れるまでのほうが印象的なのです。

彼女は2005年から不妊治療を開始し、
人工授精を10回行うも、妊娠に至りませんでした。
そして、体外受精に2回挑戦するも、
やはり妊娠には至りませんでした。
そして、ロング法という強い刺激法で、
排卵誘発を行ったため、2回目の採卵の際には、
OHSS(卵巣過剰刺激症候群)を起こしてしまい、
大学病院に緊急入院になりました。

そして、2007年の10月に、
憔悴しきって「不妊ルーム」を訪れたのです。
彼女には、「もう一度体外受精に挑戦したい」という意志がありました。
しかし、私はそれにはストップをかけました。
何よりも心身ともに、リカバリーすることが大切だと思ったのです。

それで、漢方薬を投与しながら様子を見ていたのですが、
通院から半年ほどして、クロミッドを加えた周期に、
1度目の妊娠が成立しました。そして、
2年前の2月に、第2子を希望ということで、
「不妊ルーム」に再訪されたのですが、
最初の妊娠した時と同じ漢方薬を処方したところ、
翌月には2回目の妊娠となりました。

そして、今年の3月に、第3子希望ということで、
また「不妊ルーム」にお見えになったのです。
今回は、最初の妊娠と同じ、クロミッド+漢方薬で妊娠となりました。

彼女に3度目の妊娠を告げると、
「先生、漢方薬って本当に効きますね」
という一言がとても印象的でした。彼女のこれまでを振り返れば、
その言葉には十分納得するものがあります。
「不妊ルーム」の妊娠には、漢方薬がなくてはならないものなのです。

7年前に体外受精(IVF)カウンセリングを開設しました。
体外受精カウンセリングに来られる方は、年を追うごとに増えています。

最近痛感していることは、かなり高齢になって
体外受精の相談にみえる女性が多いということ、
さらには何度も体外受精にトライして、結果的に上手くいかず、
八方ふさがりの状態で相談にみえるカップルも多いということです。

こうした方々とお話をする度に、
「もう少し早く来て欲しかった」
「できることなら体外受精に挑戦する前に来て欲しかった」
という思いを強くします。

体外受精は一回の妊娠率が22〜23%、
そして妊娠に至っても、継続して出産に至る生産率は15%強の医療です。
すなわち体外受精にエントリーしても、
7人に1人しか赤ちゃんを抱いて帰れないというのが現実です。
こうした医療に40万〜60万円、
医療機関によっては100万円近い医療費を請求されるわけですから、
セカンドオピニオンは必須です。

遠方で相談にこれないという方は、11月発売の
『私が妊娠する3つの理由』(静山社)を読んでみてください。
体外受精に関する有益なアドバイスがたくさんあるはずです。
また、『私が妊娠する3つの理由』には、
体外受精カウンセリングの開設の理由も書きました。

体外授精の妊娠率の実際

 日本産科婦人科学会の統計から読みとると、
体外受精という治療1回当たりの妊娠率は22.1%。
そして、最終的に赤ちゃんを抱いて帰れる生産率は15.1%。
すなわち、体外受精にエントリーしても、
7人に1人しか出産にいたっていないというのが厳粛な事実です。

 体外受精における妊娠率が、HP上に医療機関が
アップロードしている情報や、妊娠率と生産率の間に
これほど大きな開きがあるのは、
一つは妊娠の判定そのものが曖昧だからです。
そして、体外受精で妊娠に至っても、
自然妊娠に比べると流産をする確率も高いというのも事実です。

 年を追うごとに体外受精によって産まれてくる子供数は増加していますが、
これらは体外受精にエントリーしている人が
増え続けていることの反映であり、
妊娠率そのものはここ10年ほぼ横ばいといって間違いありません。

 平均値が22.1%ですから、当然それより成績の良い施設、
そうでない施設が存在するわけですが、
体外受精での妊娠率が5割や6割
などということは絶対にあり得ません。
ホームページ上などで多く見かける数字に私は首をかしげますが、
皆さん方はそうしたことを
事実として知っておいていただきたいと思います。

来週発売の『あなたが妊娠する3つの理由』(静山社)には、
体外受精での妊娠率について、詳しく説明しました。




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