「不妊ルーム」

Archive for 7月, 2014

前向きな人ほど妊娠しやすい

”前向きな人ほど妊娠しやすい”、
これは「不妊ルーム」のフォローアップで、私が痛感していることです。
実際、私のクリニックにたずねてくる方は、
みなさん「子どもができない」という現実を抱えています。
同じような状況にあっても、前向きに考えられる方のほうが、
妊娠する確率は高いといえます。

私が「こうしてみたらどうですか?」と言うアドバイスに対して、
いちいち「それはムリです」という言葉が出てきてしまう人は、
ネガティブ系の人だと思います。
私にできることは、妊娠力を高めるためのアドバイスでしかありません。
それを「できない、ムリだ」と拒絶されてしまえば、
とりつく島がありません。

特に、不妊歴が長ければ長いほど、
まるで自分の妊娠は治療という一本のレール上にしかありえないと
思い込んでいるところがあります。
自然妊娠なんて、ぜったいにムリと思っているのです。
ところが不妊治療というレールは、どこまで続くか分かりません。
必ずしも目的地には着かないということは、
まるで考えられなくなっているのです。

反対に、私が投げかけた言葉がすんなり入っていくようだと、
希望がもてるサインだと思います。
アドバイスを前向きに受け止めてくれるだろうと思えるからです。

このように話すと、それはもともとの性格だからしかたがないと
思われるかもしれません。
しかし、そうとばかりはいえません。
明るい性格の方でも、不妊治療歴が長くなってくると、
だんだんと視野が狭くなってくるものです。
医師の言った一言や、医学書に書かれている文葉に縛られて、
「こうでなければならない」と思いつめてしまい、
頭も心も柔軟性を失っている人がとても多いのです。
そういう方と話しているといつも、
脳の表面がコーティングされているような印象を受けます。
私の言葉が、撥水加工のようにはじかれて、ちっとも入っていきません。

だから私は、不妊治療歴の長い人とお話しする際にはかならず、
「今までのことはとりあえず一旦忘れて、
頭の中をリセットしてみてはどうですか?」と
アドバイスすることにしています。
「あなたの頭には書き込みが多すぎるのです。
今日からまた白い紙に書き込みを始めましょう」と。

不妊治療がストレスとなって、不妊治療不妊になってしまったり、夫婦仲が悪くなっ
たり、セックスレスになったりといったことを、「不妊治療シンドローム」といいま
した。では、こうした状態から抜け出すにはどうしたらいいでしょうか? そのため
のひとつの方法として、不妊治療を一時休止することがあります。

不妊治療が長引くにつれて、治療がステップアップするにつれて、患者さんのストレ
スが加速度的に増えていく場合が多いようです。患者さん自身、視野狭窄におちいっ
てしまう傾向もあります。そして孤独感を強く感じている人がほんとうに多いので
す。

何か打ち込める趣味があったり、夫婦共通の趣味を持っていると気がまぎれます。あ
るいはインターネットにアクセスして、同じ悩みをもつ人と交流をもつのもいいかも
しれません。

「不妊ルーム」に相談に見えるカップルに、不妊治療に強いストレスを感じたら、思
いきって一度治療を中断してみましょうと、アドバイスすることがあります。そして
ゆったりとした気分で、夫婦ふたりの生活をエンジョイするわけです。そのほうが案
外、妊娠に近づいたりするものです。基礎体温をはかり、排卵日検査薬を使って、集
中してセックスを行えば、より妊娠の確率が高くなりますし、不妊治療を休んでみる
のも不妊治療です。

レッスン:夫婦ふたりの生活をエンジョイする

不妊治療を離れてみる!

 不妊治療は、確かに妊娠のためのひとつの手段ですが、不妊治療をはじめると視野
狭窄になる場合が多く、妊娠は不妊治療の延長線上にしかないと思いがちです。しか
し、そんなことはないのです。

 不妊治療で、かえってセックスの回数が減ってしまうケースはよくみられます。不
妊治療のタイミング指導を受けると、排卵日に合わせて、その日のみセックスをする
という味気のない状態になります。また、人工授精や体外受精へとステップアップす
るにつれて、心身ともに疲れてしまうカップルを多くみてきました。このような状態
ではなかなか妊娠しにくいのもので、私はこれを「不妊治療不妊」と呼んでいます。

 不妊治療に行き詰まったり、不安が芽生えたときには、不妊治療をいったん休んで
自然にまかせてみるもの不妊治療です。また、その間に妊娠に至ったケースもしばし
ば見かけます。いったん不妊治療を休んだら、ふたりでゆっくり将来のことを考えた
り、旅行などにでかけてみたり、趣味をはじめるなど、リラックスして過ごすように
しましょう。

 そして余裕があれば、二人でできるタイミング法にもチャレンジしてみてくださ
い。
そのときも、「妊娠するのかしないのかは誰にもわからないんだから気楽にやろう」
というくらいに考えていてよいのです。

レッスン:不妊治療をいったん休んでみるのも不妊治療

とても印象に残っている言葉があります。これはある研究者の言葉ですが、「仕事も
最後は祈りである」と。研究者には似つかわしくないかもしれませんが、自分の仕事
が果たしてうまくいくかどうかは、神のみぞ知る。人事を尽くして天命を待つという
ことでしょう。

なんでこんなことをいうのかというと、人間というものは、妊娠しづらい動物だから
です。仮に20代の強い性衝動に駆られたカ?ルが絶好のタイミングでセックスをし
ても、2割しか妊娠しないというのが現実です。そうであるならば、「妊娠する
ぞ!」
と気負ってみても仕方ありません。

だから、あなたがこれまでに、どれだけ不妊治療にお金や気力をささげてきたとして
も、やはり最後は「祈り」だと思うのです。
「やるだけやった」と開き直ってみるのも、不妊治療を続けていく人には必要なメン
タル・マネージメントかもしれません。

現代人は男女を問わず「自己実現」こそ人生の目的とばかりに、次のステップへ進む
ことに必死になっているところがあるのではないでしょうか? そんな意識をそのま
ま不妊治療に当てはめて、治療はステップアップするのが当たり前と思ってはいませ
んか?

しかし、実際には「ステップダウン」が大変有効な場合は少なくありません。今の主
治医は「人工授精から体外受精に切り替えるしかない」と言っているけれど、別の医
師に聞いてみたら「いや、まずは腹腔鏡検査をやってみましょう」という意見が出る
かもしれません。もし私に意見を求められて、その人に自然妊娠の可能性があると思
えるなら「タイミング法に戻ってみましょう」あるいは「不妊治療を休んでみてはい
かがですか?」と言うかもしれません。

こんな象徴的なケースも経験しました。二人目不妊の女性です。最初の子どもはタイ
ミング法を試みても妊娠に至らず、人工授精5回目で妊娠、出産しました。二人目が
ほしくなった彼女は、同じ大学病院に行きました。すると、最初の子どもが人工授精
で生まれたので、今回の治療は最初から人工授精でということになりました。そこで
人工授精を7回試みましたが、今度は妊娠することはできませんでした。

そこで、彼女は体外受精を初めて受けましたが、やはり妊娠には至りませんでした。
そして私のところに相談にみえたのです。カウンセリングのその日、彼女になにが起
こったのでしょうか? 私は彼女の基礎体温表を見ました。高温期が続いています。
「あなた妊娠していると思いますよ」と言うと、まさかという顔をしています。そこ
で尿検査をしてみると、やはり彼女は妊娠反応陽性だったのです。

ステップダウンという言葉を知っておいてください。「不妊ルーム」で妊娠される方
の7割は、不妊治療からステップダウンされた方々です。治療に行き急いで疲れたと
き、辛くなったとき、迷ったとき、あなたには常にステップダウンという選択肢があ
るのだということを忘れないで下さい。




「不妊ルーム」