「不妊ルーム」

Archive for 2月, 2014

黄体機能不全の新しい考え方

 
不妊治療において原因が特定されない間、あるいはその不妊の原因が黄体機能不全や
排卵障害と考えられる場合、通常、排卵の時期に合わせてセックスを指導するタイミ
ング指導が行われます。
 
排卵障害に対しては、従来よりクロミッド(一般名:クエン酸クロミフェン)という
薬が頻用され、現在に至るまで、この薬は不妊治療の首座にある薬といっても過言で
はありません。実際、この薬により「福音」をもたらされた夫婦は数しれないと思い
ます。近年、この薬の価値はさらに高まっているように思えます。
 
それは、排卵障害と黄体機能不全は、コインの裏表のように、表裏一体の関係にある
と考えられるようになったからです。卵胞が成熟し、排卵を終えた卵胞は黄体という
ものに変化をします。その黄体から分泌されるホルモンが黄体ホルモンであり、この
ホルモンは体温を上昇させ、妊娠を継続させるという働きがあります。このホルモン
の分泌や作用が十分でない状態を黄体機能不全といい、臨床的には高温期の基礎体温
の低値や、黄体ホルモン値の低下として現れます。
 
最近の黄体機能不全の考え方としては、最初に排卵障害ありきと考えられるようになっ
てきています。ですから排卵が認められても、黄体機能不全がみられる場合には、積
極的にクロミッドが使用されるようになっています。「不妊ルーム」でもそうした考
えで、クロミッドを使うことが多くなってきました。
 

現代人は男女を問わず「自己実現」こそ人生の目的とばかりに、次のステップへ進む

ことに必死になっているところがあるのではないでしょうか? そんな意識をそのま

ま不妊治療に当てはめて、治療はステップアップするのが当たり前と思ってはいませ

んか?

しかし、実際には「ステップダウン」が大変有効な場合は少なくありません。今の主

治医は「人工授精から体外受精に切り替えるしかない」と言っているけれど、別の医

師に聞いてみたら「いや、まずは腹腔鏡検査をやってみましょう」という意見が出る

かもしれません。もし私に意見を求められて、その人に自然妊娠の可能性があると思

えるなら「タイミング法に戻ってみましょう」あるいは「不妊治療を休んでみてはい

かがですか?」と言うかもしれません。

こんな象徴的なケースも経験しました。二人目不妊の女性です。最初の子どもはタイ

ミング法を試みても妊娠に至らず、人工授精5回目で妊娠、出産しました。二人目が

ほしくなった彼女は、同じ大学病院に行きました。すると、最初の子どもが人工授精

で生まれたので、今回の治療は最初から人工授精でということになりました。そこで

人工授精を7回試みましたが、今度は妊娠することはできませんでした。

そこで、彼女は体外受精を初めて受けましたが、やはり妊娠には至りませんでした。

そして私のところに相談にみえたのです。カウンセリングのその日、彼女になにが起

こったのでしょうか? 私は彼女の基礎体温表を見ました。高温期が続いています。

「あなた妊娠していると思いますよ」と言うと、まさかという顔をしています。そこ

で尿検査をしてみると、やはり彼女は妊娠反応陽性だったのです。

ステップダウンという言葉を知っておいてください。「不妊ルーム」で妊娠される方

の7割は、不妊治療からステップダウンされた方々です。治療に行き急いで疲れたと

き、辛くなったとき、迷ったとき、あなたには常にステップダウンという選択肢があ

るのだということを忘れないで下さい。

不妊に漢方薬が効くということ

 
「不妊ルーム」のフォローアップでは、漢方薬を積極的に使用していることは、この
ブログで度々述べてきました。しかし、不妊治療の医師の中には、「漢方薬は効かな
い」、あるいは「お茶と変わらない」などと言う医師もいます。
 
それでは漢方薬が効くということは、どのようなことを言うのでしょうか? 実際に
通院されている方の基礎体温表を例に、説明してみたいと思います。
 
「不妊ルーム」では、黄体機能不全と考えられる方には、当帰芍薬散という漢方薬を
使うことがよくあります。写真の基礎体温表の、高温期のPという数字に注目してみ
て下さい。Pとは、体温を上昇させる「黄体ホルモン」のことです。
 
当院に来院された周期の高温期のP値は、11.9という数字を示しています。高温
期半ばの黄体ホルモンは、15くらいあればと、私は考えています。それで、この方
に、当帰芍薬散を服用してもらったのです。ピンクのマーカーが服用している期間で
す。服用を開始した周期から、数値が18.4に改善しています。さらに、その次の
周期においても、18.6と値は高値です。ですから、漢方薬を使った周期からは、
黄体ホルモンの値が改善されたわけです。
 
私は、こうした例を数多く経験していますので、不妊に悩む方に漢方薬が有効だと考
えているのです。そして、漢方薬だけでは不十分と考えられる場合には、排卵誘発剤
のクロミッド、あるいは黄体ホルモン製剤などを併用します。漢方薬をファンデーショ
ンとして使用するというのが、「不妊ルーム」における妊娠へのアプローチの特徴で
す。「不妊ルーム」では、これからも積極的に漢方薬を使用していきます。
 

 
人工授精を受けるとなると、妊娠する確率が低いとわかっていても、やはり期待をか
けてしまうのが人情というものです。医師の技術によって、少しは成功率が高い医療
機関もあります。自分たちの幸運を祈らない人はいないはずです。
 
その高まった期待の後に生理がきてしまったら、気分が急降下で落ち込むのも仕方あ
りません。実際、生理が来たときの憂鬱感をメールにしたためてくる女性はとてもた
くさんいます。こうした期待と落胆を繰り返すほど、気持ちのアップダウンが激しく
なり、不妊治療自体がどんどん辛いものになっていってしまいます。
 
ですから最初に「期待しすぎないこと」と自分自身に言い聞かせてください。「う
まくいったらもうけもの」。ちょっと乱暴に聞こえるかもしれませんが、人工授精に
はそのくらいの軽い気持ちでトライすることが大切です。
 
セックスの回数が少なくて人工授精を医師からすすめられているような場合、「不妊
ルーム」では、私は相談にこられた方にむしろ、積極的に人工授精を受けるようすす
めます。そして、その際に必ず、人工授精を行うと同時に、自分達もタイミング法を
行うようアドバイスします。そうすることによって、妊娠の可能性が高まるからです。
また、「不妊ルーム」では、人工授精の妊娠率の少しでも高い医療機関に紹介してい
ます。
 

 婦人科という診療科目の名称の拘束性のためか、精液検査を全くおこなわないで女
性のみの検索、加療をすすめているというケースも多くみてきました。現在、男性因
子による不妊は年をおうごとに増加しており、私が目からみてもほぼ不妊の原因は男
女半々ではないかと思えてくるほどです。

 女性因子の検索は、子宮因子、卵巣因子、卵管因子、脳下垂体からのホルモン
チェックなど多岐にわたりますが、いろいろな検査をおこなっても、3割程度が原因が特定
できない機能性不妊という診断になってしまいます。

 一方、男性因子は精液検査を一度おこない、異常がなければ男性側は異常なしとい
うことになります。簡便であることを考えれば、この検査をおこなわないというこは
考えられません。しかし、現実に全くおこなわれていないケスが本当に多いのです。

 私は、基礎体温が二層できれいであり、精液検査において異常が認められず、子宮
卵管造影検査で通過性が確認されれば、妊娠はあり得るという立場で考えます。そし
て、これ以外の多岐にわたる検査について、実は婦人科医の間でも意見の統一がはか
られていないというのが現状だと思います。

 医療機関を利用するという立場で考えれば、別に不妊治療に特化しているような医
療機関を選ぶ必要は私はないと思うのです。むしろ、気楽に自分達の現状を確かめた
いと思うのであれば、総合病院などで男性が泌尿器科を受診して精液検査を受け、女
性が婦人科を受診し子宮卵管造影検査を受ける。そして、ともに異常がないと確認さ
れれば、また半年ないし1年程度様子をみてみるというのも、一つの選択肢だと私は
思います。




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