「不妊ルーム」

Archive for 12月, 2013

妊娠を追いかけると逃げてゆく

妊娠、赤ちゃんのことにとらわれすぎないことは大切です。
夫婦の会話の中心が、妊娠のことばかりになっていませんか? 
あるいは、ことあるごとに不妊の話をパートナーにもちかけていませんか? 

もういちど、最近の日常をふりかえってみましょう。
もし、そういうことがあれば、一度、赤ちゃんのことや
不妊治療のことを頭から切り離す勇気をもってください。

私がいつも感じていることは、不妊は一刻を争う病気ではないということと、
一刻を争っているカップルほど、かえって妊娠しにくいということです。

毎月タイミング法を試みているという人は、たとえば2〜3か月、
不妊のことも排卵日のことも忘れて夫婦の生活を楽しんでみてはいかがでしょうか?
そのほうが、かえってよい結果を生むことも少なくありません。

それからもう1つ、できるだけ妊娠を気楽に考えるということも大切です。
赤ちゃんができるかどうかはだれにわからないんだから気楽にやろう、
そう思えると、気持ちが前向きになれるし、
自分とパートナーの関係を冷静に見つめなおすきっかけにもなります。
不妊治療よりも、妊娠よりも、その前にもっと大切なことがあることを忘れないで下さい。

 
スギ花粉症のシーズン中に「薬が効かなくなった」といって、医師のもとを訪れる鼻
炎の人はたくさんいます。こういう場合、たいてい点鼻薬の使いすぎです。このよう
な症状は「点鼻薬性鼻炎」などとも呼ばれます。これと同じように、不妊治療を受け
て、不妊治療そのものがストレスになり、不妊症をますます悪化させてしまう「不妊
治療不妊」の人がたくさんいます。

また、不妊治療を受けて、セックスレスになってしまうカップルも少なくありません。
「不妊ルーム」のカウセリングでも、セックスレスについての相談をたくさん受けて
います。

不妊治療を続けていると、夫婦生活をもつことが、子づくりの目的のみに行われるよ
うになりやすいということです。このような思考が芽生えると、セックスすることを
負担に感じたり、セックスそのものを拒否することにつながってしまします。また、
そこまでいかなくても、排卵日のみのピンポイント・セックスになっているカップル
もよくいます。

不妊治療においてタイミング法を行う場合、医師はもっとも確率が高い日をポイント
アウトしますが、このことは、ほかの日にセックスしてはいけないということを意味
しているのではありません。それどころか、ほかの日にセックスしないと、妊娠の確
率は低くなります。これでは、みすみす自然妊娠の可能性を狭めていることになり、
何のために治療を受けているか分からなくなります。このような傾向は、何年間も不
妊治療に通っている人ほど顕著になります。

私はこのように、不妊治療がストレスとなって、不妊治療不妊になってしまったり、
夫婦仲が悪くなったり、セックスレスになったりといった、不妊治療によってネガティ
ブな状態におちいってしまうことを、「不妊治療シンドローム」と呼んでいます。

こうした状態から抜け出すにはどうしたらいいか? そのためのひとつの方法として、
不妊治療を一時休止することがあります。不妊治療が長引くにつれて、治療がステッ
プアップするにつれて、患者さんのストレスが加速度的に増えていく場合が多いよう
です。患者さん自身、視野狭窄におちいってしまう傾向もあります。そして孤独感を
強く感じている人がほんとうに多いのです。

しかし、不妊治療に強いストレスを感じたら、思いきって一度治療を中断してみるこ
とを考えましょう。「不妊ルーム」に来られる方には、「不妊治療を休んでみるのも
不妊治療です」と、アドバイスすることがよくあります。そしてゆったりとした気分
で、夫婦ふたりの生活をエンジョイしてみてください。そのほうが案外、妊娠に近づ
いたりするものです。

妊娠しやすい3つのポイント

私が「不妊ルーム」で、フォローアップを通してわかってきたことは、
「妊娠しやすい3つのポイント」があるということです。

   1) 女性の年齢が若いこと
   2) 不妊治療歴が浅いこと(もしくはないこと)
   3) セックスの回数が多いこと

この3つが揃(そろ)っているカップルは、不妊に関する大きな因子がなければ、
妊娠に至る確率がかなり高いと言えます。

まず、1)の年齢についてですが、
私のクリニックにカウンセリングで来院する女性の平均年齢は、
だいたい35〜36歳くらいです。これは平均値ですので、
実際にはもっと若い方から40歳以上の方までいます。
こうして幅広い年代の患者さんをみていると、やはり20代の患者さんのほうが、
フォローアップを開始してから妊娠するまでの期間が短い傾向があります。
また、若い人ほど、基礎体温表と排卵日検査薬を上手に活用するだけで、
妊娠できるケースが多いのも事実です。

次に2)の「不妊治療歴が浅いこと(もしくはないこと)」このことは、
いろいろな薬が使用されていないので、
体がホルモンバランスの点から柔軟性があるということを意味しています。
と同時に、頭の方にも柔軟性がある場合が多いということも意味しています。
たとえ不妊治療歴が長くても、その精神状態をリセットして、
本来の「妊娠力」を取り戻せればよいわけですから、
例えば自分がかなりの間不妊治療をおこなってきたからといって、
がっかりする必要はありません。

そして、3)のセックスの回数が多いほうが
妊娠しやすいというのはごく当然のことなのですが、
意外とそのことには目を向けられていないと思います。
とくに不妊治療をしているカップルは、排卵の日に的をしぼってセックスをし、
その日以外は、ムダな行為と考えてしまう傾向があります。
しかし、それは大きな思い違いです。排卵前後のセックスでも、
妊娠はあり得ますし、なによりも、なんのためにセックスをするのか、
原点に立ち返って考えてみましょう。

とても印象に残っている言葉があります。
これはある研究者の言葉ですが、「仕事も最後は祈りである」と。

研究者には似つかわしくないかもしれませんが、
自分の仕事が果たしてうまくいくかどうかは、神のみぞ知る。
人事を尽くして天命を待つということでしょう。

なんでこんなことをいうのかというと、
人間というものは、妊娠しづらい動物だからです。
仮に20代の強い性衝動に駆られたカ?ルが絶好のタイミングでセックスをしても、
2割しか妊娠しないというのが現実です。
そうであるならば、「妊娠するぞ!」と気負ってみても仕方ありません。

だから、あなたがこれまでに、どれだけ不妊治療にお金や気力をささげてきたとしても、
やはり最後は「祈り」だと思うのです。
「やるだけやった」と開き直ってみるのも、
不妊治療を続けていく人には必要なメンタル・マネージメントかもしれません。

「うさぎとかめ」と妊娠

「うさぎとかめ」という有名な童話があります。
かめがうさぎにかけっこで勝てたのは、うさぎが途中でさぼって寝ていたからです。
不妊治療と「不妊ルーム」の関係も、「うさぎとかめ」に例えられるのかもしれません。
もちろん不妊治療の先生がうさぎのように、休んでいたり、さぼったりするわけではありません。

ちょっと考えてみましょう。
不妊治療の医療機関には、うさぎが駆け足で走るように、型どおりの診察と、
テンポの速いステップアップで、人工授精、体外受精へと進んでしまうところが少なくありません。
患者さんが治療のテンポについていけなかったり、ステップアップに躊躇していると、
ドロップアウトということも少なくありません。
また、治療の長期化に伴い、ストレスをため込んで
結果的にバーンアウトしてしまう女性も多く見てきました。

「不妊ルーム」は、あくまでもかめの歩みのごとく、
”まったりと、ゆったりと”をモットーに考えています。
もし妊娠へ至る道が、直線レースのようであれば、
かめはうさぎに勝つことなど絶対できません。

しかし妊娠というのは、1周が28日〜30日のトラック競技のようなもの。
かめがゆっくり歩いても、走ってきたうさぎが、
あなたのうしろにいるかもしれないと考えてみてはどうでしょうか? 
急いだからといって、いい結果が必ず出るものではありません。
うるおいのある生活を楽しむことで、気分が明るくなることのほうが、
妊娠によい効果をもたらしてくれることも多いものです。

うさぎは全力疾走するかもしれませんが、
かめはあくまでもマイペースで周囲の景色を楽しみながら、
のそりのそりと、のんびり歩いていきます。
私は「不妊ルーム」というのは、そのような場でありたいと思っているのです。
回り道をすることが、案外近道だったりするのが「妊娠」です。




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