「不妊ルーム」

Archive for 10月, 2013

「不妊ルーム」は、今から13年以上前に、不妊治療に対する違和感からスタートしました。
私は、”不妊治療だけが妊娠に至る道ではない”ということをモットーに、
内科的なアプローチで妊娠にとりくんできました。そして最近になって思うのは、
「不妊ルーム」は、つくづく通院されている人の声に耳を傾けることにより、
成長してきたということです。

今から6〜7年前に、お腹の上からの超音波検査による卵胞チェックを開始しました。
そのきっかけは、腹部超音波検査で、「こういう超音波なら、
何回やってもいい」と言われたのがきっかけでした。
その女性は、長期間に渡って不妊治療を受け、本当に辛い日々を送っていたそうです。
生理がきて憂鬱になり、排卵日近くになって、
婦人科に「卵胞チェック行かなくてはといけないと思うと、一月に2度憂鬱になる」と
おっしゃっていたのが印象的でした。
また、この腹部超音波検査による卵胞チェックを導入したことによって、
妊娠される方が増加しました。

さらに、数年前からDHEAサプリメントを薦めることも行っています。
これも最初のきっかけは、DHEAサプリメントを持参された女性が、
「これはどうなのでしょうか?」と私に質問されたのがきっかけでした。

私自身、そうした物の存在を全くその時まで知らなかったのです。
それでインターネットでいろいろと検索してみると、
DHEAサプリメントを実際に使用している不妊治療医療機関が何カ所も見つかったのです。
こうしたところのホームページを見てみると、
「年齢が高く良い卵が採れない女性にDHEAサプリメントを服用してもらうと、
良好な卵を採れることがある」と書かれていました。
また、別の医療機関のホームページにも同様なことが書かれてあり、
そこには、「DHEAサプリメントがFSHの値を低下(改善させる)」
と記してある論文が掲載されていました。

それで、私は、DHEAサプリメントによって、年齢の高い女性から良好な卵が採卵できるのであれば、
「不妊ルーム」においても、女性が良好な卵を排卵し、
妊娠に至りやすいのではないかと考えたのです。
そこで37歳以上でDHEAの血液の中の値が低い女性を対象に、
DHEAの服用を薦めたところ、37歳以上の女性の妊娠が約2割増えたのです。
現在、その年齢を35歳までに引き下げてみてはどうかと、私は考えています。

「不妊ルーム」は、これからも、通院者の方の声に耳を傾け、
一緒に成長していきたいと思っています。

AMHと「抽選器」の関係は?

誰でも、自分の作品を褒められるのは嬉しいものですし、
ネガティブに評価されれば悲しくなります。

私の今回の本『35歳からの妊娠スタイル』でも、
いろいろな感想メールをいただいております。
幸いなことに、そのほとんどが「おもしろかったです」「一気に読めました」
などといったものが多いのです。
そして、本の内容を具体的に評価されると、とても報われたような気持ちになります。

「不妊ルーム」に通院されている方で、「抽選器の話が大変良かったです。
あそこを読んで、AMH(抗ミュラー管ホルモン)のことが本当によく理解できました」
と述べてくれた方がいました。私は、そのコメントをとてもうれしく思いました。

それは、AMHという難しい医学用語を、
どのように多くの人々にわかりやすく説明するか、苦心したからです。
ある日、家電品量販店の店頭で、抽選器で賞品を渡している光景を、
私はたまたま目にしました。
そして、「抽選器で卵子のエイジングとAMHの関係を説明できるのではないか!」
と、閃いたのです。
また、「体外受精における排卵誘発のまぐろ漁の例え話だわかりやすかったです」と、
述べてくれた方もいました。

こちらが苦労したところを指摘してもらえるのは、本当に嬉しいものです。
もちろん、一人の人間が書いていることですから、内容には反発もあるでしょうし、
100%受け入れられるとも私は思っていません。

本を出すたびに、不安と期待が交錯します。
幸い『35歳からの妊娠スタイル』が、好意的に受け入れられているようで、一安心です。

「体外受精カウンセリング」を始めて6〜7年になるでしょうか? 
実際行ってみて感じたことは、「体外受精を行うのであれば、
エントリーする前に相談に来て欲しかった!」ということです。
そしてその想いは、ますます強くなっています。

体外受精は医療機関によって、排卵誘発から移植に至るまでの方法も、
まったくバラバラですし、医療費も自由診療ですから、本当に大きな開きがあります。
これまでに、体外受精1回あたり、
15万円から120万円といった医療費の開きを経験しています。
ですから、何回も体外受精をおこなうと、大きなお金が出ていきます。
また、精神的・肉体的な負担も、それ以前の医療に比べれば、
はるかに大きなものになります。

、料金体系にも成功報酬型を導入する医療機関が現れ始めるなど、
医療費のバリエーションは、益々大きくなっているのが、体外受精の現実です。
御存知のように数年前よりこの高額な体外受精という医療に対して、
色々なかたちで公的助成が行われています。

最近気になっているのが、この公的助成が行われたことによって、
体外受精の医療費を引き上げる医療機関が増えていることです。
一回あたり15万円の助成があったとしても、
医療機関が体外受精の医療費を15万円引き上げたのであれば、
何のための助成かわからなくなってしまいます。
ですから、なおのこと、体外受精にエントリーする前に相談に来ていただきたいのです。

私は、7200人近い不妊相談の経験から、
その人にあったアドバイスができるものと思っています。
そうした私の経験と想いを、最近出版した
『35歳からの妊娠スタイル』(主婦と生活社)に書きました。

体外受精を考えているということは、なかなか周りに相談しずらいことでしょう。
ですから、なおのこと、私の本を手にとっていただければと願っているのです。

『35歳からの妊娠スタイル』の発売から、今日でちょうど一週間となりました。
私のところには、本を読まれた方からの感想メールがたくさん届いています。
幸いなことに、そのほとんどが好意的なもので、ホっとしています。

今回の本は、はじめて年齢を表に出しています。
地味な本なので、大きな反響を呼ぶというタイプのものではないと思っています。
ですから、少しずつ世の中に浸透していけばと願っています。

私は、「不妊ルーム」を、不妊治療に対する違和感から13年前にスタートさせました。
しかし、時間の経過と共に、私自身の考えもシフトしていきました。
そして、5、6年前より、少子化ということを考えるようになりました。

若い人には、前倒しで子供を持つといライフプランニングを考えて欲しくて、
今年の2月に『卵子を守る!妊活レッスン』(集英社)を出版しました。
今回の『35歳からの妊娠スタイル』は、35歳以上の女性には、
「”経験値”を活かした子づくりを考えて欲しい」と思って出版しました。

さらに、『35歳からの妊娠スタイル』には、もうひとつの大きなミッションがあります。
それは、「AMH(抗ミュラー管ホルモン)に対する正しい認識を、
ひとりでも多くの女性に持って欲しい」ということです。
世の中には、AMHに関する誤解や、過剰な反応が、あまりに大きくなっています。

私は、「不妊ルーム」に来られる女性の声に耳を傾けるにつれて、
それは不安感から、危機感へと変わっていきました。
そのことが、今回の本の執筆の大きな動機付けとなりました。

『35歳からの妊娠スタイル』をお読みになった方は、
ぜひ周囲の女性達にもAMHのことを伝えて欲しいと思っているのです。
時間はかかるかもしれませんが、ひとりでも多くの方々に、
本書を手にとってもらえればと願っています。

 医療の分野では、EBM(科学的根拠に基づく医療:Evidence-Based Medicine)による
医療を実践しようといわれて久しくなりました。
確かに医療は、医学という科学の実践ですから、EBMは受け入れやすいと思います。

しかし、これに違和感を唱える医師もいないではありません。
多少、声をひそめて話すという傾向はあるようですが、
少し前に、医療関係の雑誌で、ひとりの老医師のエッセイのフレーズが、私の頭の中に残っています。

 「ある病気に対して、この薬は95%の有効性がEBM的に確認されているといわれた場合、
『私の患者にその薬を投与して、残りの5%になってしまったらどうしよう』
と思うのが、医師というものの心情ではないか」 

また、最近手にしたある大学の学内情報誌で、ある教授(産婦人科だったと記憶していますが)が、
「自分がこれまで数十年間に築き上げてきた医師としての経験から出した答えと、
EBM的に得られる答えが対立した場合、EBMは自分の答えを超えるのか、
疑問を感じることがある」といった主旨のことを述べていました。

 これが、不妊ともなると、EBMによる「死角」は大きく、見落とされるものが多々あります。
例えば、排卵前に経膣超音波検査で卵胞チェックをおこなうのは、EBMです。
しかし、これを繰り返すと、カップルの多くは、ピンポイント・セックスになります。
これでは、不妊をますます悪化させないでしょうか? 
私はこういう状態を、「不妊治療不妊」と言っていますが、うなずかれる女性も多いと思います。

 確かにEBMという支柱があれば、医師として心強いということは間違いありません。
しかし、EBMという物差しに頼りすぎてしまうと、
「人を診ずして病を診る」という医者になってしまわないでしょうか? 
「木を見て、森も見る」、そうありたいと自戒します。




「不妊ルーム」