「不妊ルーム」

Archive for 8月, 2013

『妊娠力』ノスタルジー

私が今から10年程前に出版した本に、『妊娠力』(主婦と生活社)があります。私の最初の本『妊娠レッスン』(主婦と生活社)は、”不妊治療だけが妊娠に至る道ではない”ということをテーマとした本でしたが、多くの読者から感想メールをいただきました。そして、その中に「どうしたら気持ちを楽にして妊娠を待てますか?」というメールが何通もありました。

私は、この問いかけに答えるべく、『妊娠力』を執筆したのです。幸いなことに、この本もまた多くの女性達の支持を受け、6刷りとなりました。しかし、本というのは、どんなにおおくの人々に受け入れられても、時間の経過と共に色褪せていく運命にあるのは否めません。そして『妊娠力は、とうとう今年のはじめに、絶版ということになってしまいました。もはや、本屋さんで『妊娠力』という本を目にする機会はなくなってしまったわけです。

しかし、『妊娠力』の中で私が主張したことは、時間が経っても色褪せることはないと思うのです。ですから、現在執筆している、35歳以上の女性を対象とした本では、この『妊娠力』という本の中で、支持されたお話などを再び登場させたいと私は思っています。このことがまた、『妊娠力』という本へのレクイエムになるとも思うのです。

今回の本は、これまでの本の集大成となるような内容にしたいと思っています。皆さんのご期待に応えることができるように、あとしばらく頑張ります。

妊娠5割の壁

かなり前の話になりますが、「不妊ルーム」で女性のフォローアップを行うようになってから、”5割の壁”というものを、意識した時期がありました。今から11年前に『妊娠レッスン』という本を出し、幸いなことにベストセラーとなったこともあり、「不妊ルーム」でフォローアップを希望される方が増加しました。

それと共に、妊娠される方も、月を追うごとに増えていったのです。そして、フォローアップした方が、その後妊娠されのかを追跡したところ、半数弱の人が妊娠されていることがわかってきました。「基礎体温表」と「排卵日検査薬」を用いて、タイミングをとってもらい、さらに足りないところを、漢方薬などで補填するという方法で、多くの女性が妊娠したのです。

そして私は、「なんとか、半数以上の女性に妊娠してもらうことができないか?」と、考えるようになるようになりました。しかしながら、それは困難でした。なぜなら、歳を追うごとに、「不妊ルーム」を訪れ、そしてフォローアップを希望される女性の年齢が、上昇してきたからです。さらに数年経つと、当院で第一子を妊娠され、出産された方が、4、5年経って、第二子を希望で、再訪されるケースが増えてきたのです。第一子の出産が30代半ばであれば、第二子は、40歳前後ということになります。

現在では、フォローアップを開始したころに比べると、平均年齢が約4.5歳上昇し、30代後半の女性が、当院でフォローアップを行っている方のメイン層なのです。もっとも、私の方でも、「DHEAサプリメント」を取り入れるなどの工夫したところ、今では、40代で妊娠されることも、珍しいことではなくなりました。

また、現在の女性は、仕事と育児を両立させることも大切になっています。そうした女性達に、どのように妊娠に取り組んでもらえるか、ずっと考えてきました。そしてそうした私の想いが、「35歳から妊娠を考える女性のための本」へと、つながっていったのです。

なぜ基礎体温表なのか?

私が「不妊ルーム」で、女性をフォローアップするにあたって、真っ先に着目したのは基礎体温表、次に注目したのが、排卵日検査薬でした。そして私は今、この基礎体温表というものに強い危機感を持っています。なぜなら、通院されている女性のお話を聞いても、「医師が基礎体温表に見向きもしてくれない」「基礎体温表なんかいらない」という訴えが増えてきているからです。

実は基礎体温表と日本人女性は、切っても切れない関係にあるのです。基礎体温表そのものは、アメリカで開発されたものです。そして基礎体温表は、妊娠ではなく、避妊をするためのツールとして使用されたのです。要するに基礎体温表を見て、排卵日前後と思われる期間のセックスを避ければ、避妊ができると考えられたわけです。

ところが、アメリカで経口避妊薬ピルが普及してくると、基礎体温表は瞬く間に廃れてしまいました。そして太平洋戦争の後に、日本に進駐軍がやってきましたが、彼らが持ち込んだものの中に、チョコレート、チューイングガムなどとともに、基礎体温表があったのです。そして日本人女性が基礎体温をつけ、産婦人科の医師がそれを医療の現場に取り入れるという、いわば「和魂洋才」の診療が、今日まで連綿と続いてきているのです。




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