「不妊ルーム」

不妊治療をやめるとき

不妊治療をいつやめるかというのは、ほんとうにむずかしい問題です。
これは、不妊治療を10年間続けた45歳の女性からのメールです。
私がメールで不妊治療からリタイアすることをすすめたことに対して、
お礼を書いてきてくれたのです。

   誰かにそう言ってほしかったのだと思います。
   ここまで治療をがんばってきた私たち夫婦には、
   とても自分たちで踏ん切りをつけることができなかったでしょう。
   ふり返れば、私たち夫婦には桜の花が美しいと感ずる
   心の余裕もありませんでした。

赤ちゃんがほしい、この切実な願いをかなえたいと
不妊治療に足を踏み入れ、身体的?神的苦痛を味わい、
経済的負担を強いられているカップルはたくさんいます。
不妊治療はオール・オア・ナッシングであり、
どんなにがんばっても赤ちゃんに恵まれないカップルはいるのです。

不妊治療を続ければ続けるほど、
赤ちゃんへの思いはつのると思いますが、
いつかは決断をしなくてはならないときもきます。

不妊は、その人の人生観にかかわる問題でもありますが、
どうしても赤ちゃんができなければ、
赤ちゃんのいる生活がすべてではないと
割り切ることも必要になってきます。
不妊治療をこれから始めるという方は、
そのことも夫婦で確認し合うことがたいせつだと思います。

漢方薬と妊娠力アップ

「不妊ルーム」での漢方薬を使用する際の特徴として、
西洋医学的な視点をもって処方するということです。

黄体機能不全であれば、漢方薬の服用によって、
黄体ホルモンの数値が改善してくるかどうか、排卵障害であれば、
実際に超音波検査で排卵が認められるか、
などといった確認をしているのです。

そして、健康保険適応ですから、
本人負担は、月に2000~3000円程度です。

実際に当院の漢方薬を服用されている女性は、
漢方薬について以下のような感想を寄せてくれています。

●先週から漢方薬を飲んでいますが、煎じて飲むと
体がポカポカしてくるなぁと感じます。
まだ1週間程度なので効果は実感しづらいのですが
ぜひ続けていきたいと思います。
出先ではなかなかお湯に溶かして飲むのが難しいですが、
最近では職場に水筒を持参するなどして
できるだけそうするようにしています。
ただ味が苦手でココアと混ぜたらどうかなど、画策しています(笑)

●私の場合もFSHの数値が改善したり
生理痛が楽になったりと、効果がすぐみられました。
病は気から? ということも要因かもしれませんが(笑)
値段も負担にならないですし、妊娠に関係なく
体調改善という視点でも引き続き飲んでいきたいものです。

●私はのど(扁桃腺)が弱く、だいたい季節の変わり目には
のどを悪くしていたのですが、昨年夏から飲み始め、
そういうことがなくなりました。
毎年冬は手先、足先の冷えもひどかったのですが、
その点も改善したと思います。
心なしか肩こりなども緩和したような。
漢方薬はこれまで飲んだことがなかったのですが、
こんな良い副作用があるとは嬉しいです。

妊娠しない3つの原因

私は不妊の原因を次の3つに大別して考えると、理解しやすいと思います。

 1)精子と卵子が出会うことができない物理的な原因
 2)受精卵が着床することができないという原因
 3)女性の加齢に伴う卵子のエイジングという、生理的不妊

着床障害に関してですが、精子を取り込んだ受精卵は半ば、
女性にとって異物ともいえるのですが、
この受精卵がなぜ体内から排除されないかという
メカニズムはほとんど全くわかっていないのです。
したがって、着床障害というのは、
ほとんど原因不明と考えていいと思います。
また卵子のエイジングに関しては、不可避的な現象でもあるわけで、
これといった有効な手だてがあるわけはありません。

したがって、不妊治療とは一言でいうなら、
1)を解決すべく、「精子と卵子の距離を縮める医療」といえます。
すなわちタイミング法とは、
精子と卵子が出会う日にちをより詰めることです。

人工授精は、通常の自然妊娠であれば、
約15センチの距離を泳いでいかなければいけない精子の道のりを、
精子を子宮内に注入することによって、約半分に縮めることができます。

体外受精にあっては、シャーレの中で限りなく
精子と卵子をゼロになりますし、
顕微授精に至っては強制的にその距離をゼロにしてしまうということです。

体外受精は金魚すくい!?

「不妊ルーム」では、体外受精を受けようと決めたカップルは、
「自然周期」「低刺激周期」で採卵する医療機関に
紹介することが多くなってきました。
そして、そうした医療機関で実際に体外受精を
経験された方の話を聞いていると、
“体外受精は金魚すくい” なのではないか? 
そんな風に思えてきます。

体外受精が普及してからは、ロング法、
ショート法での採卵が一般的でした。
こうした刺激法では、毎日医療機関に通院して注射をし、
両方の卵巣に数多くの卵を育てて、特定の日に一斉に採卵し、
受精した卵のうち、良好な受精卵(胚)を戻すといったやり方です。
こうした方法は、現在でも主流だと思います。

しかし、体外受精は、医師や培養士の技術が優秀であれば、
ロング法、ショート法は、必要ないと主張する不妊治療医もいます。
自然周期であれば一切薬を使用しないわけですから、
まず通院回数がグッと減ります。

排卵前に、ねらいをつけた卵にスッと近づいていって、
その一個を上手にすくいとってきて、受精させ、
そしてそっと子宮の中に受精卵を戻す。
本当に上手な体外授精-胚移植は、それだけのことなのです。
まさに金魚すくい名人が、ねらった金魚にスッと近づいて、
モナカですくい、お椀の中に金魚を入れることに似ていると思えるのです。
確かに投網を使って、数多くの金魚を捕るという方法もありますが、
これでは網の中の金魚を痛めてしまうでしょう。

現在、不妊治療、とりわけ体外受精にトライしている女性の多くは
仕事を持っていて、「そうたびたびは通院できない」
という声をよく耳にします。
こうした背景があり、自然周期、
低刺激周期採卵が増えているのだと思います。

黄体機能不全の新しい考え方

不妊治療において原因が特定されない間、
あるいはその不妊の原因が黄体機能不全や排卵障害と考えられる場合、
通常、排卵の時期に合わせてセックスを指導する
タイミング指導が行われます。

排卵障害に対しては、従来よりクロミッド
(一般名:クエン酸クロミフェン)という薬が頻用され、
現在に至るまで、この薬は不妊治療の首座にある
薬といっても過言ではありません。
実際、この薬により「福音」をもたらされた夫婦は数しれないと思います。
近年、この薬の価値はさらに高まっているように思えます。

それは、排卵障害と黄体機能不全は、コインの裏表のように、
表裏一体の関係にあると考えられるようになったからです。
卵胞が成熟し、排卵を終えた卵胞は黄体というものに変化をします。
その黄体から分泌されるホルモンが黄体ホルモンであり、
このホルモンは体温を上昇させ、妊娠を継続させるという働きがあります。
このホルモンの分泌や作用が十分でない状態を黄体機能不全といい、
臨床的には高温期の基礎体温の低値や、
黄体ホルモン値の低下として現れます。

最近の黄体機能不全の考え方としては、
最初に排卵障害ありきと考えられるようになってきています。
ですから排卵が認められても、黄体機能不全がみられる場合には、
積極的にクロミッドが使用されるようになっています。
「不妊ルーム」でもそうした考えで、
クロミッドを使うことが多くなってきました。




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