「不妊ルーム」

「不妊ハカセ」は妊娠しずらい

現代社会は、職場、家庭を問わず生活の隅々にまで、デジタル情報、
デジタル機器が入り込んだデジタル社会です。
こうしたデジタル環境は、妊娠ということに対しても、
プラス・マイナス両面で影響を与えているように思います。

デジタル社会の象徴ともいえるインターネットを
例にとって考えてみましょう。
インターネット人口の急速な増大は、
医療に関しても情報を持った患者という人々を創出しました。
またこれまでのように、医師対患者という個人個人の関係から、
患者同士の連携という新しいコミュニケーションも
生み出されるようになりました。

インターネットからの情報を読みとる側が、
しっかりとしたリテラシーを持つことが大事なのです。
私のこれまでの「不妊ルーム」での経験から、
不妊のことを勉強している人ほど、
妊娠しずらいという印象を持っています。
そして、そうした人々が持つ情報の傾向として、
自らに都合のよい情報を収集しようという傾向が認められます。

誰でも、自分の作品を褒められるのは嬉しいものですし、
ネガティブに評価されれば悲しくなります。

私の本『35歳からの妊娠スタイル』でも、
いろいろな感想メールをいただいております。
幸いなことに、そのほとんどが「おもしろかったです」
「一気に読めました」などといったものが多いのです。
そして、本の内容を具体的に評価されると、
とても報われたような気持ちになります。

「不妊ルーム」に通院されている方で、
「抽選器の話が大変良かったです。
あそこを読んで、AMH(抗ミュラー管ホルモン)のことが
本当によく理解できました」と述べてくれた方がいました。
私は、そのコメントをとてもうれしく思いました。
それは、AMHという難しい医学用語を、
どのように多くの人々にわかりやすく説明するか、苦心したからです。

ある日、家電品量販店の店頭で、抽選器で賞品を渡している光景を、
私はたまたま目にしました。
そして、「抽選器で卵子のエイジングとAMHの関係を
説明できるのではないか!」と、閃いたのです。
また、「体外受精における排卵誘発を
まぐろ漁の例え話だわかりやすかったです」
と、述べてくれた方もいました。

42歳で妊娠された女性の言葉

「不妊ルーム」は、開設してから数年の間、
フォローアップをする女性の年齢を40歳未満としていました。
それは、当時は内科医である私が、40歳以上の女性を、
妊娠という目的に向かってナビゲーションしていく自信が
なかったことも正直ありました。

その後、フォローアップを希望される女性が増えるにつれて、
また「不妊ルーム」もいろいろな工夫を行ったことによって、
妊娠は増えていきました。
それでも、年齢制限の撤廃にはなかなか踏み切れませんでした。
きっかけになったのは、ある女性の”メール”です。

かなり古い話になりますが、38歳で、二人目希望の方が見えました。
当時は、6ヶ月間フォローアップを行って妊娠に至らない場合、
不妊治療へのステップアップをすすめるということを基本にしていました。
それは、「不妊ルーム」で半年間フォローアップをして妊娠しない場合、
その後の妊娠率が低下することが経験的にわかってきたからです。

そして、彼女に不妊治療をすすめました。
しかし、彼女はキッパリと、
「不妊治療を受けるつもりは一切ありません。
このままフォローアップをお願いします」ということでした。
どれだけ時間が経っても、彼女の姿勢は一貫していました。
そして、3年8ヶ月通院された結果、妊娠反応「陽性」が出たのです。
彼女は42歳になっていました。

彼女から、無事女の子を出産したというメールをいただきました。
そのメールの中に、「子供が欲しいと思う気持ちに年齢はありません。
どうか子どもを望むすべての女性を導いてください」
と書かれてあったのです。
このことがきっかけとなって、私は”年齢制限を撤廃”したのです。
その後、DHEAサプリメントなどが味方となり、
40歳以上の女性も安定的に妊娠されるようになりました。

インターネット妊娠もある!

 インターネットを上手に利用して、
よい医師にめぐり合える場合もあります。
 東京近県に住んでいる方から、現在受診している医療機関では、
治療に関する説明がほとんどなく不安だという悩みを、
切々とメールで訴えてきた人がいました。

 私はたまたまその県に、よくメールで相談している、
たいへん信頼できる不妊治療のドクターを知っていました。
その方に「メールを転送して紹介しましょうか?」とメールしました。
しばらくして彼女から「紹介してほしい」とメールが入ったので、
そのドクターの内諾を得て転送しました。

 それから3~4か月後、担当のドクターから、
その人が妊娠したというメールをいただきました。
私はじつはどちらにも会ったことがありません。
インターネットが仲介した妊娠でした。

レッスン:ネットの情報は必要なところのみをインプット

妊娠しやすい3つのポイント

私が「不妊ルーム」で、フォローアップを通してわかってきたことは、
「妊娠しやすい3つのポイント」があるということです。

1) 女性の年齢が若いこと
2) 不妊治療歴が浅いこと(もしくはないこと)
3) セックスの回数が多いこと

この3つが揃(そろ)っているカップルは、
不妊に関する大きな因子がなければ、
妊娠に至る確率がかなり高いと言えます。

まず、1)の年齢についてですが、
私のクリニックにカウンセリングで来院する女性の平均年齢は、
だいたい35~36歳くらいです。これは平均値ですので、
実際にはもっと若い方から40歳以上の方までいます。
こうして幅広い年代の患者さんをみていると、
やはり20代の患者さんのほうが、
フォローアップを開始してから妊娠するまでの期間が短い傾向があります。
また、若い人ほど、基礎体温表と排卵日検査薬を上手に活用するだけで、
妊娠できるケースが多いのも事実です。

次に2)の「不妊治療歴が浅いこと(もしくはないこと)」。
このことは、いろいろな薬が使用されていないので、
体がホルモンバランスの点から柔軟性があるということを意味しています。
と同時に、頭の方にも柔軟性がある場合が多いということも意味しています。
たとえ不妊治療歴が長くても、その精神状態をリセットして、
本来の「妊娠力」を取り戻せればよいわけですから、
例えば自分がかなりの間不妊治療をおこなってきたからといって、
がっかりする必要はありません。

そして、3)のセックスの回数が多いほうが
妊娠しやすいというのはごく当然のことなのですが、
意外とそのことには目を向けられていないと思います。
とくに不妊治療をしているカップルは、
排卵の日に的をしぼってセックスをし、その日以外は、
ムダな行為と考えてしまう傾向があります。
しかし、それは大きな思い違いです。
排卵前後のセックスでも、妊娠はあり得ますし、
なによりも、なんのためにセックスをするのか、
原点に立ち返って考えてみましょう。




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